The Planetary Society of Japan

ブラウン惑星人の日々 November 2017

リュウグウランデブー時の本質的科学課題を

POSTED BY: Takahiro Hiroi | DATE: November 25, 2017

秋も深まり、こちらでは真冬に感じるほど寒い日もありますが、日本の皆様はいかがでしょうか?2週間の日本帰国を終えて、日曜日に帰ってきて以来、数日働きましたが、今は感謝祭の連休で休んでいます。ほっとした気分の今、日本での日々を振り返りたいと思います。

今回はいつものように阪大での宇宙風化実験が主目的ですが、週末と金曜日は様々なところで講演に招待され、また、東大の駒場キャンパスで、紫外光による宇宙風化実験を始めることができました。更に、佐々木晶さんのおかげで、その授業のゲスト講師として、2時間の授業を2回担当させてもらえました。最初の写真は、2度目の、炭素質コンドライトの母天体の話を、はやぶさ2ミッションや宇宙風化実験の結果を交えて講義した時のものです。1回目は分光のモデルの話などの基本でしたが、やはり物理学科を出てきた学生たちなので、理解度が高いと感じました。

下画像. 阪大宇宙地球の佐々木晶さんの授業をゲスト講師として担当した2回目の様子。

最初の週末には、呉での一般公演会が夜だったので、早めに着いて、大和ミュージアムを見て回りました。私の世代では、宇宙戦艦ヤマトから戦艦大和に入っていったので、ヤマトを思い起こさせた「はやぶさ」ミッションの後継はやぶさ2チームのジャケットを着ていきました。次の写真は、そういう意味合いを込めて、ヤマトのモデルの前で写したものです。実物大モデルを再現して乗船できたらすごいと思いますね。

下画像. 呉の大和ミュージアムで戦艦大和の模型を背景に。

呉市の繁華街には、市の広報のための小さな展示場があり、その一番上(3階?)に松本零士展がありました。写真にあるように、その経歴や、特に宇宙戦艦ヤマトに関するものが多くありました。特にスターシャの顔が宇宙に浮かんでいる絵は、40年以上前に映画を見に行った時のことを鮮やかに思い起こさせるものでした。はやぶさ初号機は最初のヤマトの話のように高温天体に行き、はやぶさ2はヤマト2のように水を含む低温起源天体に行くという点では類似性がありますね。

下画像. 呉の市街地にある呉市の広報用施設の最上階の松本零士展。

それを前後して、神奈川県の観音寺高校の体育館で多くの生徒に対して講演をしましたが、パソコンが変わったせいもあり、音声を出すのに苦労しました。熊本での一般公演では、同じ問題で開始がかなり遅れてしまい、私自身の知識と準備の足りなさを悔やみました。そのために、見せたいビデオなどをカットしてしまったので、今後は準備周到にしていくぞと決意させられる体験でした。月曜日の朝に講演に行った宮崎北高校では、ちょっと体育館が明るかった難点はあったものの、映像と音声は完璧で、機械や設定によって大きく変わるのだなあと実感しました。宮崎北高校では生徒たちからの感想文をいただき、意識の高いものが多く感心しました。

最後の週末には奈良県の青翔高校と西大和学園で連日講演会があったので、奈良で一泊することにし、雨でしたが、午前中だけ観光をできる機会がありました。以前LPSCの後でSpace Center Houstonに連れて行った西谷君にまた付き合ってもらって、写真のように、東大寺とその付近を回ってきました。宇宙風化実験で指導をさせてもらっている田中君はいろいろ忙しくさせてしまったので、そっとしておいて。ただ、西谷君にも田中君にも西大和学園での講演に来てもらえなかったのは残念でした。

下画像. 阪大の西谷君と雨の中の奈良を観光。

今回も2週間飛び回るようにいろんなところでいろんなことをしましたが、帰って来てからは寒いボストンで疲れをいやしながら割とのんびりしています。すぐにまたLPSCの要旨を書くことや、期限が過ぎている論文を書くことなどで忙しくなりそうですが、はやぶさ2チームが相模原で国際合同科学会議を開く11月末から12月始めにも、私はこちらでせいぜいWebExで遠隔参加しながら、はやぶさ2がリュウグウに来夏ランデヴーした際に直面するであろう本質的科学の問題を解決すべく努力を続けたいと思っています。

 

帰国直前のボストンの紅葉

POSTED BY: Takahiro Hiroi | DATE: November 05, 2017

秋が深まるのを躊躇しているような今日この頃、日本の皆様はいかがお過ごしでしょうか。11月といえば、ここ米国北東部においてはとても寒い季節のはずですが、昨日から70度Fを超す陽気で、かと言えば曇りの日は50度台までしか行かなかったり、朝は40度台に戻ったりという、アメリカではよくある気まぐれで、不思議な気候の秋になっています。最初の写真は、10月末頃に写したブラウン大を通るThayer通りからRELABがあるMacMillan Hallを望んだものですが、きれいな紅葉が見えます。そのままゆっくり秋が深まるかと思っていたのですが、予想に反する長い陽気になりました。

下画像. 10月末にブラウン大で見られた秋の紅葉。このビルの反対側の3階に私が働くRELABがあります。

それと、ちょっとご報告が遅れましたが、ブラウン大があるProvidenceの下町のバスターミナルを囲む地域が完全禁煙になっていました。これは数年前から提案されては棄却されていた案ですが、とうとう6月に、市議会が決議し、市長が拒否権を発動したのですが、市議がもう一度絶対多数で9割以上の賛同を得て、拒否権を無効にしてすぐ施行したものです。写真にあるように、通りも歩道も完全禁煙で、罰金は$50です。右側のBoston Commonは他の市営公園と共に3年近く前から完全禁煙で、罰金は$250のはずですが、両者ともまだ警察がそれを取り締まっていないのが問題で、昨日も、私は休暇を取っていたので、ボストン警察に電話してちゃんと取り締まるよう要請しました。日本では15歳くらいの時から14年間禁煙化の運動をしてきましたが、アメリカに来て27年で、やっとこの程度まで来ました。ブラウン大のキャンパスもまだ禁煙になっていませんし、まだまだです。

下画像. プロビデンス下町とボストンコモンでの禁煙表示。ボストンコモンの方は罰金が$250なんですが、書いてないですね。

さて、研究の話題に行きますと、先日、 Mutch Lectureに、あのNew HorizonsのAlan Stern氏が来られました。Mutch Lectureというのは、ブラウン大やNASAで活躍しながらも、働き盛りの時にヒマラヤで遭難したThomas Mutch氏の功績をたたえ、親族が寄付をして確立した講義シリーズで、外部から高名な講師を呼び、講義の後に会食もあるという豪華なものです。次の写真はその広告です。

THOMAS A. MUTCH MEMORIAL LECTURE
Thursday, November 2, 4:00 PM
CV Starr Auditorium, MacMillan Hall 117
Dr.?Alan?Stern, Principal Investigator, NASA New Horizons Mission

The Exploration of the Farthest Worlds: The Story of New Horizons to Pluto”
 

下画像. 先日のMutch LectureでのAlan Stern氏の講演の広告。

ご存知かと思いますが、しばらく前に話題をさらった、New Horizonsミッションは、NASAのNew Frontierミッションの1つで、冥王星を初めて高分解能で撮像し分光で組成を求めたミッションです。特に、白いハート型の地域が人々を魅了しましたね。Alan Stern氏はそのNew Horizonsミッションの主研究者(PI)で、過去に何と15個ものミッションのPIをされたそうです。昼食での学生への議論の集会の後、この4時からのMutch Lectureでした。

次の写真は、講義の前に参加者の学生と雑談するAlan Stern氏(右)と、紹介をしたWilliam Lowell Putnam氏の写真です。Putnam氏は、あの有名なLowell天文台を作った人の孫にあたるそうですね。冥王星は、準惑星に格下げされる前は、アメリカ人が発見した唯一の惑星で、発見者のClyde Tombaugh氏はNew Horizonsが冥王星に向けて飛び立つ前に他界されたので、その遺言で、自分の遺灰を持っていってほしいと語り、実際に探査機に特別なケースをつけて遺灰を運んだそうです。これも史上初の出来事でした。

下画像. Mutch Lectureの前に参加者と話しているAlan Stern氏と、Stern氏を紹介するWilliam Lowell Putnam氏。

New Horizonsは最初の提案から何度も内外の理由で選考から外れ、冥王星が実は太陽系外縁部への中間地点で微惑星らしき天体が多く存在するカイパーベルト天体の1つであるという発見の後でやっとその価値が評価されて通ったそうです。このミッションの業績は、あのVoyagerに匹敵するもので、Voyagerの時には生まれていなかった若者たちも多く、この時代に本当に必要だったミッションともいえるかもしれません。また、Voyagerなど、黎明期の大型ミッションは失敗を考慮して2基を同時期に飛ばしていましたが、New Horizonsは信頼性の高い1基だけをしっかり作り、世界最高速のロケットを使って、机の大きさくらいの非常に小型軽量の探査衛星を積んで、冥王星まで飛ばせるだけの加速を実現したものです。

また、次のNASAのWebページにも写真と説明があるように、宇宙開発や惑星探査において画期的な業績を上げたミッションの名前を、冥王星の地域につけてあり、ハート形の左側の地域はスプートニク、右側はTombaugh、そしてその周りにはVoyagerと並んで日本のHayabusaがありますね。これは日本にとっても歴史的快挙だと思います。

https://www.nasa.gov/feature/pluto-features-given-first-official-names

私は明日からまた2週間の日本出張です、阪大での宇宙風化実験と講義のほかに、東大駒場で新たなやり方で宇宙風化実験を始めます。そして休日中には4つの中・高校と、2つの一般公演をします。はやぶさ2の科学面の一般教育にもなると確信しています。本当はチーム員たちにも講義したい内容ですが:)はやぶさ2ミッションの分光分野での科学を成功させることが、惑星探査における私の3つ目で最後の責任分担ではないかと感じています。もちろん、ほかの分野でやりたいことは多々ありますが。

 

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