The Planetary Society of Japan

Discovering Enceladus

Why Enceladus

Updated : September 18, 2016

 

南極付近で発生している見事なプリュームの発見が、カッシーニによるエンセラダス探査深化への最初のアプローチとなりました。これによって、エンセラダスの内部海の「海水や海中の揮発性成分や固体成分」を直接サンプリングすることの意義が、惑星探査研究者にとって大きく広がりを見せ始めました。この発見がその場探査へのブレイクスルーとなったというわけです。

1981年にヴォイジャー2号によるエンセラダスフライバイによってもたらされた画像からは、凍りついた地域とクレーターの形成地域が見られ、天体の地質活動が顕著には見られないものでした。今もなお躍動する天体活動を続ける驚愕の発見は、2004年のカッシーニ探査機によるエンセラダスフライバイによってもたらされます。
このことは、今年(2016年)8月に木星の第一回フライバイを行ったジュノー探査機が撮像した南北の極の様子を、かつてカッシーニがフライバイした際には捉えることが出来なかったことを想起させますね。

カッシーニの土星到達以降、飛躍的に進んだエンセラダスの現状と理解は、惑星科学に海洋学、生命科学(細分化すれば有機地球化学や極限環境生物学等も含めて)などの他分野にも刺激を与え、カッシーニ以前には具体的な集合が見られなかった惑星探査の世界に当然の帰結ながら太陽系惑星科学探査の新たな分野を見出すことともなったのです。
 


ペンシルバニア州ドレクセルヒルのアーティスト、Karl Kofoed 氏によるこのレンダリングは、土星の小さな月エンセラダスの南極表面の亀裂から空間に噴出する純水氷粒子のストリーマを、その氷の結晶で遠くから届く太陽光を屈折して映し出します。
” Image by Karl Kofoed - Drexel Hill, Pennsylvania ”
Credit: Copyright 2008 Karl Kofoed

 

地球外生命探査の可能性

生命を抱く可能性のあるエンセラダスや、他の天体(例えばエウロパやガニメデ、火星など)への理解・知識を増やすための「道標」としてのエンセラダス探査とするのもいいかもしれません。
リンクは、エンケラドスの海で、地球の深海でも起こっている水熱現象(熱水噴出)と同様の現象が起こっているという直接的証拠が、NASA カッシーニ探査機によってもたらされたことを報じる記事です。「地球外でのこのような現象の発見により、先例のない科学的可能性が開けるだろう」とNASA 研究者は述べていますが、この数日前に、東京大学関根康人らが、エンセラダスプリューム噴出粒子の中にナノシリカ粒子が検出されたことから地上での様々な条件での実験を行い、エンセラダスでの海洋環境を実現できたことを受けての JPL 発表でした。
Spacecraft Data Suggest Saturn Moon's Ocean May Harbor Hydrothermal Activity

 

生命探査のサスティナビリティ

外惑星での生命探査をより効率的に定式化することを支援するとともに、国内外の研究者への関連する情報の橋渡しを行い、連携すべきことへの障壁を無くすための活動も大事です。
画像は、リンク先トップに置かれたもので、エンセラダス表面の現在の活発な活動面と接して、古代より変わらぬ静的な面持ちが、土星の大きな重力と深い時間を経たことの傑作だ、としています。本文はこれとは関係なく、E リングの生成過程を述べています。
Cassini Mission Enceladus: Ocean Moon

 

効率的な生命探査

太陽系内における生命探査の場所を効率的に決定するということは、日本に於いては国産ロケットの限界や政治的な政策レベルでのプロジェクト選定という大きな壁があります。
画像は、2011年07月29日にカッシーニによって撮られた、「ヤヌス、パンドラ、エンセラダス、レア、ミマス」の五衛星が一同に会したシーンです。エンセラダス探査には、必ず日本も関わって頂たいと切望します。
JPL Images - Quintet of Moons

 

将来探査へのイントロダクション

いつか、外惑星(地球よりも外側の軌道を周る惑星)への有人探査が必ず行われます.エンセラダス探査を検討・実施することは将来の無人・有人宇宙ミッションの目的地を決定する際に大いに役に立つと期待されます。画像は、中身が既に「古紙」となった NASA ウェブですが、有人探査へのロードマップを PDF 化したものです。
” The Future of American - Human Space Flight ”

 

プロジェクト発進時期の特定

直近の打ち上げチャンスは、2019年までの木星スイングバイになります.NASA での実施のみ可能でしたが、プロジェクトの立ち上げは無く、次回に期待します.日本では’30年以降ですね。画像は、2007年の New Horizons 木星フライバイの様子を描いたアーティストコンセプトです。
” New Horizons jupiter flyby ”

 

ポスト・カッシーニ

数々の観測成果を挙げたカッシーニですが、搭載された観測機器には限界もあります.外惑星の探査のための新技術を開発、改良し、カッシーニに勝るとも劣らない探査機を送り出しましょう。画像は、太陽系最外縁のオールト雲を抜けて、磁気ハイウェイを抜けていくボイジャーを表現したものです。

” Humanity’s Farthest Journey ”

 

最適な探査対象

エンセラダスは、フライバイ&ランデブーサンプルリターンミッションが期待できる太陽系内の天体であり、探査手法もカッシーニによってたくさんの技術証明が行われ、その観測アプローチは今は容易です。また、画像のように、惑星間物質のスクラップとも言われる分化、未分化小惑星のかけらを採取することも太陽系形成&生命起源解明にとって非常に重要です。

” SSE Gallery - Crumbling Asteroid ”

 

氷天体の内部構造解明

生命探査とともに、その地質構造の解明も大切です。氷下に海流を持つと見られる同様な天体との比較も可能で、木星圏衛星へのアプローチによりそれが期待できます。図は、エンセラダス氷下海洋中のメタンの潜在的な起源をシュミレーションしたものです。カッシーニによるプリューム観測から幾つかのシナリオを想定し、そのうちの過飽和した状態のメタンを示しています。

” Trapping of Methane In Enceladus' Ocean ”

 

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