The Planetary Society of Japan

次世代太陽探査

「惑星科学の今後を考える会」の報告

Updated : October 31, 2016 - 太陽系惑星科学の勧め

日本惑星科学会誌「遊星人」 Vol. 21, No.3, 2012 掲載

小林直樹1,高橋芳幸2,鈴木絢子2,和田浩二3.
1.宇宙科学研究所, 2.惑星科学研究センター, 3.千葉工業大学惑星探査研究センター

この原稿元ファイル:[ 日本惑星科学会誌「遊・星・人」第21巻(2012)3号 - PDF ]
 

要旨

2012年07月24日,神戸大学惑星科学研究センター内の講義室にて「惑星科学の今後を考える会」なる催しが開かれた.本稿はその会議の参加記録であり,紹介である.1992年に惑星科学会が発足して以来 20 年の歳月が流れた.その間,惑星探査,大型望遠鏡観測,大規模シミュレーション科学等の大型プロジェクトに関わる研究者も増え,拠点と呼ばれる組織も生まれてきた.本会では惑星科学コミュニティにおけるそうした拠点組織の持つ役割と課題を整理し,現状認識を深め,大型プロジェクト研究を推進できる力を持つコミュニティの今後のあり方について議論した.
 

1. はじめに

惑星科学研究センター(CPS)が発足して 5 年目を迎えた.CPS は様々な領域の研究者が集い知的情報を蓄積する場を作り支援することで,惑星科学の専門分化の弊害を克服し惑星科学を総合化するために生まれた組織である.今この CPS も来年度からの活動経費としてグローバル COE に代わる財政基盤の獲得という問題に直面している.財政問題は課題であるが,そもそも CPS の果たして来た役割というものが果たして惑星科学コミュニティにおいて必要とされてきたものであるのか,またコミュニティ於いて CPS はどう理解されているのかという問題意識も生じてきた.そこで「CPS とは何であるのか」という問いかけをし,コミュニティにおけるその役割をもう一度見つめ直す場を設けようという話が月曜放談会 ※1 で上った.しかし,こうした問題意識はコミュニティに何らかのサービスを提供している拠点と呼ばれる機関に於いても共通のものである.各拠点を惑星科学コミュニティの持つ機能と位置づけた場合,それらの機能は必要十分であるか,相補的になっているか,足りない機能が無いかなどを確認する場を設けたいと考えた.その背景には惑星探査を始め大型化する科学を舵取るだけの体力や体制が惑星科学コミュニティに備わっているのかという問題意識もある.そこで,惑星科学コミュニティに存続する拠点と呼ばれている機関のコミュニティにおける役割を総括し,見いだされる問題点の整理とあるべき姿を論じ,今後の惑星科学コミュニティの強化に繋げる企画を設けることになった.今回開催された「惑星科学の今後を考える会」はその起点であり,先ず各拠点の代表者にそれぞれの役割について語っていただき,現状を把握し上に述べた意味でコミュニティの持つ機能を整理したいと考えた.具体的に言えば表 1 を埋めて行く作業である.

※1 有志による「惑星科学」を考える意識・情報共有のためのテレビ座談会.
 

表 1 : 拠点機関の持つ特徴的機能の素案.

  ISAS CPS PERC ARC-Space NAOJ(MIZ) Univ.
機関連携(研究分野育成) 共同利用 交流の場,会合開催支援     共同利用  
国際協力 共同探査推進 交流の場,研究者招聘支援 機器搭載 国際惑星データ連合    
機器開発 搭載機器開発・蓄積,
支援,ペネトレータ
  搭載機器開発,
LIDAR,LIBS
光学搭載機器,
探査検討参加
望遠鏡,レーザ高度計,
リフレクタ
 
データアーカイブ C-SODA     形状モデル,SPICE対応,
センター構築
   
シミュレーション基盤            
人事交流 共同利用   客員滞在   共同利用  
人材育成 研究者育成(総研大) 実習開催支援     研究者育成(総研大) 基礎教育,
研究者育成
知見集積   講演動画蓄積        
その他   学会サーバ,将来構想        

 

今回拠点として紹介された機関は宇宙科学研究所(ISAS),惑星科学研究センター(CPS),千葉工大惑星探査研究センター(PERC),会津大学先端情報科学研究センター宇宙情報科学研究クラスター(CAIST / ARC - Space)それに国立天文台(NAOJ)であった.それに加え冒頭講演として惑星科学コミュニティのこれまでの歩み(山本哲生)と総合討論で理工連携を目指す東大新領域での試み(杉田精司),大学における惑星科学(倉本圭)それに宇宙工学者から見た惑星科学コミュニティ(稲谷芳文)というコメンテーターを迎えた.急な呼びかけにもかかわらず,2012年07月24日午後,会場である神戸大学惑星科学研究センターのオフィス内にある講義室には 40 名近い惑星科学者が集った.神戸会場以外にも宇宙科学研究所,東大柏,東工大,北大,会津大学,国立天文台の各会場と TV 会議で結び遠隔から参加された方も多かった.以下,簡単ではあるが著者の視点で「考える会」の議論の一端を紹介したい.
 

2. 講演紹介

2 - 1. 惑星科学コミュニティがめざしてきたもの(山本)

1996年の ” 将来計画専門委員会 - PDF ” の報告書の提言について詳しい説明があった.そこでは日本の惑星探査の立案・推進方法,宇宙物質科学研究体制の今後,研究教育ネットワークについて構想が描かれていた.報告書にあるように,1990年代までは小粒ではあるが独創的な探査を目指して日本の惑星科学は進んで来たが,現在では科学が一層に大型化して大型ゆえに独創性より普遍性,誰でも考えを同じくするテーマに進みつつある一方で,科学全般としては多様化が進み科学者の視野狭窄が問題となっている.報告書にある「探査の 5 原則」に即して,大型化する惑星探査に関しては,国内で探査の計画からデータ解析に至るまで全過程を独力で実施できる「完結性」を備えた上での「国際協力」が大事である.また,その実現のためにも宇宙工学との連携が重要であるという指摘で話は終えた.質疑では将来計画専門委員会の報告書が今の若い惑星科学研究者に共有されていないという指摘,リスクを覚悟で進めた探査の方向を失敗したからと言って降りてよいのかという指摘,報告書の提言のうちどれくらいの結果をなし得たかについての質問があった.1996年報告書の提言のうち研究教育ネットワークについては CPS の活動として結実しているものもあるとのことであった.
 

2 - 2. 日本の惑星探査の課題(藤本)

御自身の分野である宇宙プラズマの進展がミッションと共にあったという経験から「次につなげる探査」の重要性を説いた.「次」とは「次のミッション」だけではなく「学問の次の形」も含む.惑星探査の二大テーマである「太陽系起源」と「惑星形成進化」では日本は伝統的に前者が強く,強い分野に絡めて探査を構築できれば勝算があろうと語った.山本の「探査の 5 原則」に加えて「旬な探査」という視点を加えた.ある程度分ってきた対象で大きな話につながる探査ターゲットを指した言葉である.現在ある数々の提案(大型のものも含む)に対し,それを実現するだけの財政基盤が無いという問題点,それに伴う計画の長期化問題も指摘された.長期化に対しては装置開発ができる人材育成の問題,評論家体質の脱却,結束力のある合意形成の必要性を述べた.そうした状況で「はやぶさ 2 」と「JUICE」は「旬の探査」と呼ぶべきポテンシャルを備え,惑星科学コミュニティを変えて行く良い試金石となると語った.質疑においては,宇宙研の役割と逆に宇宙研から惑星科学コミュニティへの期待の質問があった.宇宙研の役割は「皆さんのチャンスを掴むように上手に探査をドライブすること」であり,コミュニティの役割としては「合意した方向性から具体的実施案へと作り込む官僚機構的役割」であると回答があった.探査の周辺にいる人の役割として「はやぶさ2」をどうサポートするか,機器開発担当でない機関の人はどうしたらよいかを考える必要があること,なんとなく探査ミッションの周辺をうろつくメンバーがそれなりにいることの重要性を指摘した.
 

2 - 3. CPS の目指すもの(中川)

CPS は新しいタイプのネットワーク型国際センターであり,様々な研究者の出会いの場の提供,惑星科学の発展を促す企画や人材育成のプログラムの提供,知見情報の蓄積・配信,将来構想のシンクタンク機能の支援などを通じて国際的な惑星科学のネットワーク型センターを目指している.目指すモデルとしては ISSI(スイス),LPI (米国),Newton Institute(英),基礎物理学研究所(京都)が挙げられる.実績として国際プラネタリースクールや各種実習会の企画,運営,惑星探査討論会などの実施など,全国に分散する惑星科学研究者に数々のサービスを提供してきた.課題は GCOE の終了する来年度以降の財政基盤の確立そして学術研究に関する既成の価値観・評価基準との闘いである.CPS の活動は発表論文数や学位授与数では評価できないものであるが,それがなかなか理解されないのが現状である.質疑では CPS からコミュニティに期待することが訊かれ,CPS が提供するサービスやファシリティを大いに利用して使い尽くして欲しいという回答があった.CPS の研究者は大学研究者が教育して研究するのと同じくコミュニティにサービスをして研究する者であり,特別な違いはないと指摘があった.また CPS は中身の無い箱であり,諸々のしがらみの無い場所であるので大いに利用してほしいと訴えた.一方,CPS の理念は本来価値の高いものであるが,実態として惑星科学業界のニーズを本当に反映しているのかという問いかけもあった.
 

2 - 4. PERC の紹介(並木)

PERC は常勤 10 名,客員 3 名からなる惑星科学・探査を推進する研究機関である.理論・物質科学・地質学の研究者を集めて国内外の機関とも連携し,はやぶさ 2,MELOS,Bepi-Colombo,JUICE, Rosetta,SELENE - 2 の各プロジェクトに参加している.搭載機器としては LIBS,実験設備としては火星環境チャンバーがあり,現在は衝突銃の設置を進めている.上記のプロジェクトへの関わりの他,超小型,小型衛星を使った大学・研究機関主体のプロジェクトに挑戦をし始めたという紹介があった.超小型衛星による惑星探査は困難であるが惑星科学のための観測ならばまだ余地が残されている.第一号では流星観測衛星の実現を目指している.低コストで実施機会の多い超小型衛星では機器開発や観測運用の経験蓄積が期待できる.PERC の課題は私立大学付属の研究所として短期で実現できる成果を示すこと,役割としては探査を支える研究拠点であること,研究者間の連携強化に寄与すること,ミッション機器の PI やサイエンスマネージャーの育成を挙げた.質疑では PERC における学生教育について質問があった.学内教育に携わって行くには制度上の困難があるが,他大学や研究機関からの受け入れは可能であれば行いたいと回答があった.大学との連携で教育育成をもう少しうまくやれる方策が無いかとのコメントもあった.コミュニティ内での役割という点では,PERC 自体はコミュニティへの貢献を目的として活動している訳ではなく,自分達の研究を進めるという姿勢で取り組んでいるとのこと.
 

2 - 5. CAIST / ARC - Space の紹介(出村)

CAIST/ARC - Space は,電気・電子工学および情報工学の応用分野を開拓するため宇宙・環境・医療分野が選ばれ,理工連携や外部資金の獲得を担うセンターとして発足した.日本に深宇宙探査を手がける情報系大学を創ることを念頭に置き,日本のフラッグスタッフ(USGS 宇宙情報地質学チームの所在地名)を目指している.最初の 10 年間の活動方針は2 つ.ソフト面では「はやぶさ」,「かぐや」の成果を挙げること,そしてそれら解析支援のツールやアーカイブサイエンスの基盤を整えること,探査ミッション運用支援ソフトウェアの開発・供給することにある.ハード面では光学機器開発に絞り,それを活かした探査提案をおこなうことである.それにより,宇宙関連プロジェクトへの参加・提案支援,運用・データアーカイブ作業支援,ISAS 科学衛星運用・データ利用センター(C - SODA)他と連携したデータセンターを目指している.機関連携としては JAXA プロジェクトへの参加や各機関研究者と連携しての機器開発と探査ミッション提案,JAXA および NAOJ と大学院教育連携,そして深宇宙探査データセンター構想が挙げられた.同構想は JAXA の枠組みと相補的な役割であるとして,探査拠点機関や PI 研究室レベルでデータを分散管理するもので,WMS(Web Map Service プロトコル)を前提としている.個々のプロジェクト遂行に責任をもつ JAXA とアーカイブを持つ大学群とで責任分界点の定義が明確であると説明があったが,質疑において責任分界点が本当に明快なのかという質問があり,CSODA から提案されている「科学データの公開・利用について」を引き合いにした説明があった.
 

2 - 6. 国立天文台の惑星科学の取り組み(佐々木)

国立天文台(NAOJ)における惑星科学分野は月惑星探査検討室(RISE)のほかに系外惑星,小天体,惑星形成理論の 3 つのグループがある.NAOJ はプロジェクト制をとって事業にあたっている.部門として電波研究部,光赤外研究部,太陽プラズマ研究部,理論研究部があり,天文情報センター,先端技術センター,天文データーセンターの 3 つのセンターを持つ.プロジェクト制の問題点として大きなプロジェクトはターゲットではなく手法で分かれており,縦割り色の濃い点,プロジェクト業務が優先され科学成果論文が少なくなる傾向があること,波長を乗り越えた研究分野のロードマップが描けないことが挙げられた.プロジェクト遂行と科学成果追求の両方の人材が必要である.RISE グループは研究教育スタッフ6 名,技術スタッフ 2 名,研究員2 名から成り,現在院生はいない.主に VLBI 望遠鏡のある水沢地区で活動している.「かぐや」の解析から惑星探査の将来計画へと活動の足場を移しているところ.活動にあたって天文台とくに VLBI 望遠鏡などのヘリテージと人材を活かすことと他機関との協力を進めている.問題点は学生がいないことのほか,プロジェクトスケジュールが JAXA に依存していること,コミュニティとの公のつながりが電波専門委員会であり,惑星科学の人が少ないことである.また,天文台内部として水沢地区の(惑星科学という特定分野での)本格拠点化は厳しい見通しである.
 

3. 総合討論

3 - 1. 大学の取り組み

総合討論では杉田から東大柏新領域で進めている理工連携の取り組みについて紹介があった.惑星科学における大学の役割として,探査データの高次理解の推進,搭載装置の基礎開発,次世代人材の育成があるが,日本の惑星科学の現状として衛星の機器開発の拠点が育っていないという問題点がある.その弱点を補うためにも,探査に熱意を持っている宇宙工学者との連携が重要であり,理工連携のプラットフォームを提供し惑星探査につながる機器開発環境を整えたい.また STP 分野との連携も大切であると話があった.次に倉本による「大学の役割について」紹介があった.大学の役割は教育(人材育成と供給)と研究(自由な発想)であり,その両立をなす場である.しかし,大学も厳しい状況にある.大学院重点化により人気大学への集中と少子化問題,不況マインドと安定志向を求める学生気質が挙げられる.その中で理学においても「役に立つ」分り易いテーマが求められ,理学としてのまとまりのなさが目立つようになった.こうした中,分野を先導する若手をいかに育成するか,惑星科学の大学における役割を捉え直すことが鍵となると指摘があった.
 

3 - 2. 宇宙工学から惑星コミュニティへ

以上は拠点機関の代表も含め惑星科学コミュニティから各機関の役割について語ってもらったが,コミュニティの外から見て惑星科学コミュニティがどう見えるか,何を期待しているのかという点について宇宙工学の稲谷からコメントがあった.先ず宇宙科学ミッションを生み出すための仕組みである大学共同利用のスキームの「課題と現実」とこれまでそれを使ってどのように進めて来たかについて話した.現在プロジェクト化を目指して活動中のワーキンググループ(WG)は理学 8,工学 10,小型科学衛星 WG も理学 9,工学 4もあるが,現状の制約から考えると,現実的な時間の中でその全てがプロジェクト化へと結実できないことは明らかだろう.そのなかでも惑星ミッションで元気のよいのがどれほどあるか現状を良く見てほしい.また深宇宙ミッションは,M5 以降は失敗が多いという状況もあり,良い深宇宙ミッションを作ることは宇宙工学としての重要課題でもある.これらの環境と現状のもとで,惑星科学とプロジェクト実行のプラットフォームである宇宙研および宇宙工学とはどういう関係を持つのか,相互にどう利用して活性化していくのか良く考えたい.惑星コミュニティはミッションを生み出すことのできる集団であるのか.理工が一緒に働くためのプロトコルは何か.政策課題実行型事業と科学ドライブの間の相互補完の関係の中で好循環のシステムをどう構築するのか?という難しい問いが発せられた.
 

3 - 3. 宇宙政策委員会からのメッセージ

続いて渡邊から伝言の形で「宇宙政策委員会の考え(秋山)」の紹介があった.「今後,十分な財源の無い日本で惑星探査ミッションを考えるとき,そのミッションは文科省への予算要求に留めるミッションと位置づけるのか,あるいは国策的なフラッグシップミッションとして,従来の枠を越えた予算要求を行えるようなものと位置づけるのか,この二つを最初から明確に分けて考えてアプローチ先についても考える必要がある」とのことだった.
 

3 - 4. 生態系の構築を目指して

最後にコミュニティ全体の生態系の中で各拠点機関を有機的につなぐビジョンをどう作るか,人材育成の問題にどう対処するのか,理工連携をどう実現するかについて討論をおこなった.先ず現在の機関連携で今後もやっていけるのかという点について議論した.各人各様でやりたいことを提案しているが,それでやっていけるというのは最早幻想である.自分の興味を実現するモデルに拘泥せずモデルチェンジが必要であるとの指摘があった.ここでモデルチェンジとは自身が関わる狭い分野の利益から広い分野での興味を惹き付ける仕組みへの変化を指す.また,中心となって実行する人(リーダー)がいないこと,周囲のリーダーへの支援環境も必要であることが指摘された.合意形成に関しては,他の分野でも手伝って良いというミッション,小規模でもリターンが大きいミッションなどが条件として挙げられた.また,JUICE の経験を活かして 5 年後にそのようなミッションを創出しようという意見が出た.探査の「完結性」と「国際協力」という点において,日本の惑星科学コミュニティおよびそれを取り巻く現状では全てを独力で行うことは難しいので,他国のミッションに機器提案するところから始めるべきではないかという意見があった.これに対し,それぞれが機器レベルで勝手に進めて行くと却って結束力を無くすのではないかという意見があった.

更に惑星探査は宇宙科学においてコアになりえる存在であるという認識を示し,それをどう実現していくかについて議論した.そのためには惑星探査を実行できる力を担保する必要があり,宇宙科学が惑星探査にシフトしなければならないという意見があった.その実施には高エネルギー天文学など老舗分野からの人材登庸が必要とされるが,X 線天文分野でも機器開発能力は低下しつつあり,外部への人材提供の難しさがあるという指摘があった.また,惑星業界以外の人を巻き込むにも次に何が重要な探査なのかについての考えが共有されていないと始まらないのではないかという指摘があった.周りを取り込むにも足場固めも必要である.
 

4. 結び

以上駆け足でであったが「惑星科学の今後を考える会」の概要について紹介した.今回の会議の目的は各拠点のコミュニティの中での役割を整理し問題や不足している点を見い出すことであった.そして大型研究をより強力に推進するコミュニティ作りの足がかりとなることであった.各拠点の質疑を見るに,拠点側が考えているほど周りのコミュニティは各拠点について理解していないということも浮かび上がって来た.それは総合討論で示された拠点機関の役割の構図:「宇宙研 = 殿様」,「PERC など = 豪族」,「大学 = 民百姓」,「CPS = 宗教家」という図式にも表れているように思う.この構図に共感を示す参加者も多いようだったので,今後も相互理解を深めて行くためにもこうした討論会を続けていく必要を感じた.この考える会は月曜放談会の有志による企画で始まったが,惑星科学のコミュニティの生態系の再構築という課題として,日本惑星科学会将来計画委員会で継続して審議される運びとなった.大型科学研究を推進可能なコミュニティへ脱皮するには課題は山積である.放談会では学会での取り組みと平行して,あるいはそれを補うために,今回の討論会で確認された問題点や課題を解決するような取り組みを今後も企画していきたいと思う.
 

 

 

CATEGORY: 次世代太陽系探査

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