ボイジャー探査機 : 天王星リングの揺らぎは未発見の二つの衛星による可能性

ボイジャー2号が天王星を通過したのは30年も前のことだが、当時収集されたデータからは現在も新しい発見がもたらされている。アイダホ大学の研究者らによれば、天王星の二つのリングに未発見の小さな衛星が二つあることが示唆されている。
 

この画像は、2003年8月にハッブル望遠鏡で撮影された画像を基に、視認性向上のため天王星と周囲のリング・衛星に着色したものです。尚、この画像は、右に90度傾けています。
Image credit: NASA/Erich Karkoschka (Univ. Arizona)
 

アイダホ大学の博士過程の学生、Rob Chancia が、ボイジャー2号によって1986年に撮影された、年代物の天王星の氷のリングの画像を解析している際、あるパターンに気づいた。天王星の最も明るいリングである α 環の端が周期的に変化していた。これは隣接する β 環の同じ部分にも見られた。

「リングに沿った異なる場所を観察すると、その波長がそれぞれ異なることが分かり、何かがリングに沿って動いていることを示している。何かが波長に影響を与えている。」と、アイダホ大学の助教授で Chancia の指導を担当する Matt Hedman は語った。これらは、The Astronomical Journal に掲載される予定であり、発行に前もって arXiv というサイトに投稿された。

Chanciaと Hedman は、現在は土星を周回しているカッシーニからのデータを使用して土星の環を研究しており、惑星のリングの物理学に精通している。カッシーニのデータによって、惑星のリングがどのように振る舞うか新しい知見が得られ、NASA の要請によりボイジャー2号で得られた天王星のデータを再び精査することになった。特に、ボイジャー2号が送信した電波のリングによる変化や、背景の星の光のリングによる蝕の分析に注力した。これらの分析により、リングの密度が明らかになってきた。

土星のリングに見られる衛星に起因する外乱と同様のパターンが、天王星のリングにも見られることがわかった。
天王星のリング上に想定される衛星は、土星の衛星と同等の直径 4 km から 14 km 程度で、これまでに知られる天王星の衛星のどれよりも小さい。天王星の衛星は表面が暗く発見されづらい。

「実際に視たわけではないが、パターンを説明するにはこのくらい小さくなければならない。」と Hedmanha 語った。
「ボイジャーの画像から衛星を確認するのは至難である。」

これらの発見により、土星と比べて異常に細い天王星のリングの特徴を説明できるかも知れない。これらの衛星が存在してるとすれば、リングの物質をまとめあげる牧羊犬のような役割を果たしていると見られる。これまでに知られている 27 の衛星のうちの二つ、Ophelia と Cordlia は天王星の ε 環でそのような働きをすることが知られている。

「1977年に天王星のリングが発見されて以来、リングを細くさせている原因が動力学者によって研究されてきた。」と Chancia は語った。
「衛星の存在が確かめられれば、このリングの問題へアプローチできる。」

地上望遠鏡や人工衛星画像で、天王星の月が実際に存在しているかは他の専門家に任せるとした上で、Chancia と Hedman は、天王星のリングの構造の研究を続けると語った。

「ボイジャー2号の歴史的な天王星探査によって、いまだ新たな発見がなされるのは素晴らしいことだ。」と、カリフォルニア工科大学のボイジャー・プロジェクトの科学者、Ed Stone は語った。

ボイジャー2号と1号は、1977年に16日の間隔を空けて打ち上げられ、木星と土星に向かった。ボイジャー2号は最長の連続運転を行う宇宙船であり、数年以内に太陽系外宇宙へ到達し、ボイジャー1号と合流する予定だ。太陽系惑星を遠く後ろにしてなお、前例のない太陽系観測は続き、ボイジャーが旅する宇宙の重大な情報をもたらし続ける。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office