カッシーニ探査機 : エンケラドスの氷表面直下は想定よりも暖かかった

2004年から土星軌道上にある NASA のカッシーニ探査機は、旅の最終章を開こうとしている。ミッションのグランドフィナーレの一部として、一連の土星環ダイブの一回目を4月26日(水)に、土星とその環の間の 2,400 km のギャップを通過する。
 

カッシーニによる撮像のエンケラドスの南緯度の色彩を強調したこの図では、南極極域を横断する青い「タイガーストライプ」と呼ばれる亀裂が特徴。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute
 

余分な熱は、tiger stripes とは違った3箇所の亀裂で特に顕著だ。tiger stripes が極をまたいで現在活動中なのに対して、これら3箇所の亀裂は現在活動しているように見えない。月の暖かい地下の海の上に横たわっているように見える休眠中の亀裂は、エンケラドスの地質学にダイナミックな性格を示しており、いくつかの活動エピソードを経験した可能性があることを示唆している。

この発見は、エンケラドスの氷の地殻の厚さを推定したカッシーニミッションとは独立したチームによる2016年の調査結果と一致する。この研究では、南極で 5 km 未満の厚さで、18 - 22 km の氷殻の平均深度が示されている。

カリフォルニアのパサディナにある NASA のジェット推進研究所のカッシーニ・プロジェクト科学者 Linda Spilker 氏は、
「これらの三つの休眠中の亀裂の近くの温度が他より温かいということは、エンケラドスをさらに興味ふかいものにした」と語った。
「暖かい地下の海がどんな様子で、そこに生命があるのか?これら疑問への答えは、この海洋世界への来るべきミッションの課題だ」
 

エンケラドス形成史の語り部

画像キャプションのページから:Enceladus the Storyteller

悠久の時と捻れた引力が生み出した傑作、エンケラドスの責め苛まれた表面とその魅惑的な進行中の地質学的活動は、1つの衛星の過去と現在の闘争を物語る。これは、2006年03月10日に Science に掲載された論文で、画像分析科学者によって詳述された物語である。

このエンケラドスの色彩を強調した画像は、主に南半球であり、画像の下部に南極の地形が含まれている。
(冒頭の画像のトリミングされていないもの。)

古代のクレーターは、一部の地域では手付かずだが、他の地域では明らかに平滑化している。月の回転速度の変化とその結果としての平滑化によって引き起こされた可能性のある、北向きの亀裂は、南半球を横断している。南極の地形には、青色の亀裂が顕著で、目立って連続した折り目と稜線の連鎖で囲まれており、エンケラドス内部が未だ沈黙していない証だ。

画像は、2005年03月09日と07月14日に、カッシーニが撮影した 21 枚の画像から作成された。これら画像は紫外線、可視光、赤外光に敏感なフィルター(338?930 nm の波長)を使って撮影し、カラー画像として合成したものだ。

画像は、南緯 46.8 度、西経 188 度を中心とする正射投影で、1 画素あたり 67 m。オリジナルの画像は、1 画素あたり 67 m から 350 m の解像度で、エンケラドゥスから 11,100 から 61,300 km の距離で撮影さた。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office