カッシーニ探査機 : NASA グランドフィナーレの分刻みの工程を発表~終焉への道~

NASA カッシーニ探査機は、土星の大気圏近接フライバイを始めてから18日になる。09月15日の運命的な大気内への急降下は、既に確定している。

土星の衛星タイタンによる04月22日の重力アシストは、2トン半の重量を持つ探査機本体を壊滅的な破壊へと導いたと言える。しかし、いくつかのミッションが残すマイルストーンは、先駆的な科学を見出してきた探査機の終焉を仕掛けるものとも言え、これを今後二週間余りに渡り実施することとなる。
 

土星大気圏突入前を描いたアーティストコンセプト。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech
 

「カッシーニミッションは、初めての土星探査であり、無数のサイエンスを私たちに与えたこのミッションは、大気層のサンプリングを含め、最後までさらなる知見を私たちに与えることになる」と JPL サイエンティストの Linda Spilker は語った。
「カッシーニが大気圏に突入し、同時にほぼリアルタイムでデータが彼からくる。これは本当に行われる土星で初めてのイベント」
 

Cassini: A Saturn Odyssey

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探査機が土星の上層大気への降下を開始し始めると、約1分から2分以内に地球との通信を失うことが予想される。しかし、途中で接触がなくなるまで、カッシーニ搭載の12の科学機器は機能し続ける。特に、Ion and Neutral Mass Spectrometer(イオンとニュートラル質量分析計 = INMS)は、大気の組成を直接サンプリングし、巨大な惑星の形成と進化についての洞察を地球に送る。
大気突入の前日、カッシーニの他の機器は、土星のオーロラ、気温、惑星の極付近にある渦の詳細な高解像度撮像を行う。カッシーニのイメージングカメラは、最終突入の前日14日に、土星系の撮像を行ってその「任務」を終える。

遺された最後の一週間で、カッシーニ探査機は有り余るサイエンスを満たした土星への飛行中に、いくつかのマイルストーンを刻む。
以下に記した詳細にある時間は予測であり、若干の変更があるかもしれない。更新された時間については以下ウェブをご覧頂きたい。
https://go.nasa.gov/2wbaCBT
 

フィナーレに至る探査機のタイムライン

(地球にデータが届く時間を記しています)

09月09日 :
カッシーニ探査機は土星・リング間の22回目のグレイジングフライバイを行う。これが最後の「通過」となる。最接近時には、雲頂から 1,044 マイル(1,680 キロメートル)に及ぶ。

09月11日 :
カッシーニ探査機は、土星の最大の衛星であるタイタンを遠くに見ながら航行するが、タイタンより 73,974 マイル(119,049 キロメートル)も離れているにもかかわらず、探査機はタイタンから重力の影響を受けて速度を僅かに落とす。これにより、数日後には土星の大気層の最外縁をフライバイする軌道から、摩擦と加熱に耐えられない軌道へと向かう。

09月14日 :
カッシーニ探査機のイメージング・カメラは、土星系全体を見渡しながら、土星本体の北極周辺にある六角形のジェット・ストリームや、タイタン、エンケラドスを撮像し、リングの近接画像を取得して地球に送る。これが最後の土星系の撮像となる。

09月14日
4:22 p.m. EDT / 1:22 p.m. PDT(イベント発生時)
5:45 p.m. EDT / 2:45 p.m. PDT(地球受信時)
:
探査機はアンテナを地球方向に向け、ミッションの終焉に至るまでの通信リンクを開始し、獲得したデータを地球に送り続ける。

09月15日
3:14 a.m. EDT / 12:14 am PDT(イベント発生時)
4:37 a.m. EDT / 1:37 a.m. PDT(地球受信時)
:
”Final Plunge”(最後の飛び込み)が始まる。探査機は、大気を有効にサンプリングするためのINMSの位置補正に向けて、5分間のロールを行い、ほぼリアルタイムで取得したデータをミッション終焉まで送信し続ける。

09月15日
6:31 a.m. EDT / 3:31 a.m. PDT(イベント発生時)
7:54 a.m. EDT / 4:54 a.m. PDT(地球受信時)
:
カッシーニ探査機は土星の大気層に突入する。その際スラスターは、データの継続的な送信を可能とするために突入方向の維持に当たり、探査機のハイゲインアンテナは地球を指し示し続けて最後の「任務」に当たる。

09月15日
6:32 a.m. EDT / 3:32 a.m. PDT(イベント発生時)
7:55 a.m. EDT / 4:55 a.m. PDT(地球受信時)
:
カッシーニのスラスタの出力は100%に達する。大気による抵抗は、探査機の姿勢制御を維持するスラスタの能力を圧倒し、ハイゲインアンテナは地球に向けた通信機能のロックを失う。この瞬間、探査機の高度は土星の雲頂から約 940 マイル(1,510キロメートル)と予想され、探査機からの通信は途絶し、カッシーニ探査機の二十年に及ぶミッションは完了する。その後カッシーニは、流星の如く潰えていく。

(09月12日修正)
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office