Dawn 探査機:活発な地質活動を示すケレスの高輝度エリア


もしあなたが、Dawn 探査機に搭乗し矮惑星ケレスをフライバイすると、その表面は全般にかなり暗く見えると思うが、一部に際立って異なるスポットがあることも判るはずだ。これらのスポットは、Dawn から送られる画像の中にある、数百に上る際立って明るい領域だ。
 

Image Caption :
合成された Occator crater の展望図。幅 92 km、深さは 4 km ほど。 この地域は、Dawn 探査機が2015年初めにケレスを訪れて以来、非常に高い関心を集めてきた。北に面したこのビューは、Dawn による低高度軌道(385キロメートル)でのマッピングにより合成されたもの。
キャプション原文:” Occator Perspective View ”
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA
 

現在、科学研究者らにより、これら反射率の高い領域(高輝度スポット)が、どのように形成され、時間の経過と共にどのように変化してきたかの解明が進んでいる。このことは、ケレスの天体活動が活発であり進化途上の天体であることを示している。

「ケレスの未解明の高輝度スポットは、Doawn 探査機のサイエンスチームや一般市民の両方を魅了し、ケレスにおいて過去に地下海が存在した証拠を明瞭にし、活動の止まった天体ではなく、地質学的にも驚くほどに活発な矮惑星であることを示している。今日にもケレスは、その顔を変えているかもしれない」
カリフォルニア州パサデナにある NASA ジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory, JPL)に拠点を置く Dawn ミッションの副主任である Carol Raymond は、このように語る。

Raymond らは、12月12日(2017年)にニューオリンズで開催された米地球物理学連合(ASEAN)で、高輝度スポットに関する最新の結果を発表した。
 

様相が異なる高輝度スポット

Dawn 探査機は、2015年03月にセレス軌道に乗り、科学者はセレスに300以上の明るいスポットを特定した。Icarus 誌に掲載された、カリフォルニアのパサデナにある Caltech(カリフォルニア工科大学)の Dr. Nathan Stein らによる新たな研究論文では、ケレスの特徴を四つのカテゴリーに分類している。

最初の高輝度のカテゴリは、クレーターの底部に見られるもので、ケレスでは最も反射性のある材料を含んでいる。 なかでも象徴的な例は、Occator Crater(オッカトル・クレータ)であり、二つの明るく顕著なスポットが存在している。
 

The Bright Stuff: New NASA Dawn Findings at Ceres

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クレーターの中心にある Cerealia Facula は、6 マイル幅(10 キロメートル幅)のピットを覆う明るい材料で構成され、その中には小さなドームがある。真ん中ほどより東側には、Vinalia Faculae と呼ばれる反射は少ないが広く拡散する特徴の地域がある。Occator Crater の明るい素材は塩分に富んだ材料で作られており、Cerealia Facula はケレス表面全体では最も明るいエリアだが、人間の目には汚れた雪に似て見える。

全球的に見られる第二のカテゴリでは、明るい物質がクレーターの縁にあり、底部に向かって縞状に形成している。これらを表す物体は、既に地下にあるか、以前の天体活動の影響で形成された明るい物質を露出している可能性が高い。

これらとは違い、第三のカテゴリでは、クレーターが形成されたときに放出された材料中に明るい材料が見出されている。

Mt. Ahuna Mons は、単域独自の第四のカテゴリに仕分けられている。ケレスにおける一例であり、衝突クレータ形成とは無関係と思われる。恐らくこのようなクリオボルカーノ(凍った火山状形成)は、ゆっくりと流れる氷を多く含む物質が徐々に堆積して形成された火山状で、その近接した周辺には明るい領域が目立つ。

数百万年の間、明るい物質はケレスの表面の大部分を形成する暗い物質と飛来物体との衝突時に放出された破片と混ざり合っている。惑星形成後、ケレスがより多くの飛来物との衝突を経験した頃は、ケレスの表面は数千もの高輝度スポットで覆われていた可能性が高い。

「これまでの研究によって、明るい物質は塩でできており、表面下の液体の活性が表面に移動して輝点の一部を形成すると考えられる」Dr. Nathan Stein は述べた。
 

Occator Crater(オッカトル・クレータ)について

Occator Crater には様々な明るいスポットがあるが、それぞれが何故そんなに個性が違うのだろうか?
ワシントンのスミソニアン研究所(The Smithsonian Institution)の惑星地質学者、Lynnae Quick は、この疑問を掘り下げている。

「Occator で起こったことについて言うと、過去に塩水の貯水池があった可能性があるということ。クレーターの中央ドームの北東に広がっている輝く領域である Vinalia Faculae は、コルクを抜いたときにボトルから出てくるシャンパンと同様に、少量のガスによって表面に運ばれた液体により形成された可能性がある」

Vinalia Faculae の場合、溶存ガスは水蒸気、二酸化炭素、メタンまたはアンモニアのような揮発性物質であった可能性がある。
揮発性が高く塩分を多く含む水は、Occator Crater から表面下に向かって裂けた割れ目を通してさらに下の澄んだ貯水池につながっていて、これを通してケレスの表面に運ばれた可能性がある。より低いケレスの表面の圧力は、液体が蒸気として沸騰する原因となっただろう。裂け目が表面に達したところで蒸気は氷と塩の粒子を噴出し、ケレス表面にそれらを堆積させたと考えられる。

Cerealia Facula は、それが Vinalia Faculae よりも高く上昇し明るくなっているため、多少異なるプロセスで形成されていると考えるのが妥当だ。
Cerealia の材料は溶岩状の氷のようで、裂け目を突き抜けてドーム内に膨満しているかもしれない。Vinalia が形成されたときに起こったのと同様に、断続的な煮沸相が起こり、この表面に氷と塩粒子が表面に散在し、Cerealia 輝点が形成されたと考えられる。

Lynnae Quick による分析は、Occator Crater を形成した衝突による影響には依存していないが、Dawn 探査機のサイエンスチームの現在の考えは、大きな天体がケレスに押し込まれて(衝突して)57 マイル幅(92 キロメートル幅)のクレーターを掘削したならば、その衝撃によって地下海へと亀裂が生じ、後になって液体が表面に噴出する可能性もあるということだ。

「木星衛星エウロパなど、他の太陽系天体にも亀裂(裂け目)が見られる。エウロパの亀裂は、Occator Crater で見られるものよりも広範囲に渡るが、今日のエウロパの「ひび割れ」の下に存在するとみられる地下海に関する形成プロセスは、過去の Occator Crater で起こったかもしれないプロセスと比較することができる」と、Lynnae Quick は語る。
 

Dawn 探査機が、これまでにない高度に降下するミッションの最終章を継続し続ける中、科学者は、ケレスの高輝度スポットを形成する材料の起源と、Occator Crater の謎めいた形状を生成した理由について引き続き探究する。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office