カッシーニ探査機 : タイタンの海は地球の海洋と酷似している


土星の衛星タイタンは、地球から10億マイルほど離れているが、NASA カッシーニ探査機のデータから新たな分析に基づいて書かれた論文によると、この遠くで土星を周回するタイタン世界が、我々生命が息づく地球と非常によく似ているという。
 

カッシーニ探査機によって撮られた、タイタンで二番目に大きなリゲイア海(Ligeia Mare)の擬似的に着色された画像。エタンやメタンなどの液体炭化水素で満たされており、タイタンの北極圏に散りばめられた海や湖の一つだ。現在(2013年03月22日)、カッシーニはリゲイア海の波の観測には到っていないが、次回、2013年05月23日のフライバイ時に再び観測を試みる。
画像は2006年02月から2007年04月の間にカッシーニ探査機が取得したレーダー画像の偽色補正したモザイクである。暗い領域(低い電波反響)は黒色に着色され、明るい領域(高い電波反響)は黄色から白色に着色される。このカラースキームでは、暗い液体は黒く見え、明るく見えるタイタンの固体表面は黄色に見える。
キャプション原文 : Vast Ligeia Mare in False Color
Image credit: NASA/JPL-Caltech/ASI/Cornell
 

地球上では海洋面(日本では東京湾)の平均海面を基準の 0 m(標高 0 m。「海抜」は測る対象の近隣の海面)としているが、タイタンにおいても海洋面の平均高度を基準としている。タイタンの海は、クラーケン、リゲイア、プンガがある。

これは、地球とタイタンとの間にある顕著な類似を示す最新の研究発表であり、タイタンは、太陽系内において安定した液体海を表面に持つ地球以外の唯一の天体だ。
タイタンの地球との違いは、その湖と海が液体の水ではなく炭化水素(メタンなど)で満たされ、固体の有機物質の層に覆われた水氷が、これらの湖と海を覆う「岸壁」となっているということだ。
 

コーネル大学の Dr. Alex Hayes(アレックス・ヘイズ)が主導した、地球物理学研究誌に掲載されたこの論文では、タイタンの海は地球の海と同様ように、タイタンの重力に比例して絶え間なく変化していることを発見した。
点在する小さな湖は、タイタン海表面よりも数百メートル高い標高で現れ、こうした高高度の湖は地球上でもよく見られる。大型船で運行できる地球上で最も高い湖であるチチカカ湖は、標高 12000 フィート(3700 メートル)を超えている。

新たな研究は、タイタンの標高が重要であることを示唆する。なぜなら、タイタンの液状物質は、地下の帯水層に似通った形で表面下で繋がっているように見えるからだ。炭化水素は、水が地下の多孔質の岩石や砂利を通り抜けるのと同様に、これらタイタン湖も表面下でも同じことが起きていると推測される。つまり、近くの湖は互いに地下で通じ合っていて、ほぼ共通の液体湖面を保持することになる。

同紙(地球物理学研究誌)は、昨年の土星大気中へのダイビングでカッシーニ探査機が燃え尽きる数カ月前まで、カッシーニのレーダー装置によって得られたデータに基づいていたが、今回の発表では新たな地形図を公開している。

2つの論文の詳細は、以下にある。
” Saturn's moon Titan sports Earth-like features ”
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office