Dawn ミッション:最近起こったケレスの表面変化を解明


NASA Dawn 探査機は、ケレス表面に比較的新しい変化を検出し、太陽系内惑星領域で唯一の矮惑星であるケレスは、今も進化し続けて変化する動的な天体であることが明らかになった。
 

NASA Dawn 探査機によるこのビューは、永久影となっているケレスの Juling Crater の北壁で氷が発見された場所を示している。Dawn は、2016年08月30日にフレーミングカメラで画像を取得し、NASA エイムズ研究センター Stereo Pipeline(ASP)の協力のもと、処理をし崖の斜面を推定した。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA/ASI/INAF
 

03月14日に Science Advances に掲載された二つの論文(新たな発見を文書化)によると、Dawn ミッションは、最近暴露された堆積物において、地殻内の物質に関する新しい情報と変化するプロセスを発見したとしている。

Dawn 探査機の、可視および赤外線マッピングスペクトロメーター(VIR)によって以前に行われた観測で、ケレス表面のダースサイトで水氷を発見していた。今回の観測データによる新しい研究では、直径 12 キロメートル(20キロメートル)のクレーター Juling Crater の北壁に豊富な氷があることを明らかにした。さらに、2016年04月から10月にかけて実施された新たな観測では、火口壁面にある氷の量が増加していたことも判明している。
 

Dawn 探査機からのこの展望は、ケレスの最高峰であるアウナ山(Ahuna Mons, 高さ 2.5 miles (4 kilometers), 幅 11 miles (17 kilometers))だ。右下の画像に見える緑色と赤色の部分は、炭酸ナトリウムが相当量見つかった、ケレス上では珍しい地点を示している。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA/ASI/INAF
 

「これは、セレスの表面において、初めて直接的に検出されたものだ」と、ローマ天体物理学研究所のアンドレア・ラポーニ(Andrea Raponi)は語った。

ラポーニは、この最新の研究を進めていくなかで、矮惑星ケレス表面に暴露された氷の量が変化することを発見した。
「太陽を周る軌道による季節的な変化によってケレス表面から水蒸気の放出を引き起こし、それが冷たい火口の壁面に凝縮することで、氷の露出量が増加する。気温が上昇すると火口の壁に土砂崩れが起こり、新鮮な氷が露出するステージに移る可能性もある」
 

化学的、地質学的、地球物理学的観測を組み合わせることで、Dawn ミッションは、ケレスの包括的な見解をはじき出す。以前のデータにより、ケレスは約 40 km の厚さの、水・塩類、そしておそらくは有機物が豊富な地殻を持っていることが判っている。

これらの研究は、VIR(可視および赤外線マッピングスペクトロメーター)観測によって、ケレスの地殻変動について新たに情報を更新し、新たに露出した物質による形状変化を示唆している。
 

Dawn ミッションは、これまでのケレス観測で、地球上の海洋中で形成されるものと共通する炭酸塩を発見している。例えば、炭酸ナトリウムは ” オッカトルクレータ(Occator Crater) ” の明るい領域に多く分布し、同様な組成の物質は、オクソクレータ(Oxo Crater)とアウナ山(Ahuna Mons)でも発見されている。

宇宙物理惑星科学研究所のジャコモ・カロッツォ(Giacomo Carrozzo)が主導するこの研究は、炭酸塩が豊富な 12 の地点を特定し、水が炭酸塩構造の一部として存在する場所を示す数平方マイルのいくつかの領域を詳しく調査した。この研究は、ケレスや地球以外の他の惑星体の表面に水和炭酸塩(hydrated carbonate)が発見された初めての特徴であり、矮惑星の化学進化に関する新しい情報を私たちに提供している。

水の氷は、ジュニングクレータの場合のように、陰に隠されていない限り、長時間にわたりセレスの表面上で安定しない。同様に、水和炭酸塩は脱水するが、数百万年の長い時間スケールで行われる。

「これは、水和炭酸塩の豊富な場所が、最近の活動によって表面上に露出されていることを意味する」とカロッツオは語る。

地滑りや低温変成などの衝撃による物質、氷、炭酸塩の多様性は、ケレスの地殻が均一な組成ではないことを示唆している。これらの異質性は、地殻を形成した元の海洋状の凍結中に発生したか、後に起こった大きな衝撃や低温物質の介入の結果として生じたものであった。

「矮惑星ケレス地質構造が地質学的にも化学的にも活性な物質に支配されていることにより、短いタイムスケールでの水氷の増量と水和炭酸塩の存在の変化をもたらしている」と宇宙物理惑星科学研究所の VIR チームリーダー、クリスティーナ・デ・サンクティス(Cristina De Sanctis)は語る。
 

6月上旬、Dawn 探査機は、最終的なこのケレス周回低軌道に到達する。直後に、これまで前例がなかったポイントから、画像やその他の科学データを収集し始める。この低軌道は、ケレスの表面から 30 マイル(約 50 キロメートル)の距離を通過するが、過去に最接近した際の軌道高度と比較して 10 分の 1 である。

ケレスの最上層の化学構造の変化を理解するために、Dawn 探査機はガンマ線と中性子スペクトルを収集する。

Dawn 探査機が、これまでの軌道から最終軌道へと移動することは、道路で車線変更するような単純なミッションではない。

Dawn ミッションチームは、イオンエンジンによって推進されている百戦錬磨の探査機をこの第2の拡張ミッションのコースにプロットするため、数ヵ月間の活動を要した。エンジニアは、最良の科学観測を可能にする計画立案にあたって、45,000 以上の可能な軌道を描いた。

Dawn 探査機は2007年に打ち上げられ、これまでよりもさらに掘り下げた太陽系の本質を明らかにするために、小惑星メインベルトにあるベスタとケレスの二つの太陽系最大級の小惑星を探査している。ケレスの軌道に入ったのは、2015年03月であった。

カリフォルニア州パサデナの NASA JPL(ジェット推進研究所)のキャロル・レイモンド(Carol Raymond)は、次のように述べている。
「チームは、詳細な組成と高解像度画像が届くのを熱い思いで待っている。これらの新しい高分解能データ取得により、私たちは以前に取得したのデータと併せて分析し、この魅惑的な矮星の新たな特色を発見することができる」
 

Dawn 探査機の予定軌道に関する詳細は、Marc Rayman の ” Dawn Journal ” にある。Rayman は Dawn ミッションのミッションディレクター兼チーフエンジニアとして活動している。

Dawn ミッションについての詳細は、以下のサイトを参照いただきたい。

Dawn NASA

Dawn Mission JPL
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office