インサイト火星着陸探査機「追従するキューブサットが見た、淡い青色の点 ” A Pale Blue Dot ”」


かつて、NASA Voyager(ボイジャー)探査機は、60 億マイル以上離れた地球の「古典的な肖像画」を撮影した。カールセーガンの提案によるものだった。
火星ディープコアミッションのために飛び立ったインサイト探査機は二機のキューブサットを伴っているが、彼らから地球と月が並ぶ画像が届けられた。ボイジャーによる撮像と同様に、NASA では ”A Pale Blue Dot”(淡く青い点)という表現をこの画像に与えている。

インサイト探査機を追跡する Mars Cube One(MarCO)と呼ばれる一対のキューブサットは、打ち上げから3日後の05月08日、地球から 621,371 マイル(100 万km)に達し、キューブサットによる最遠の距離とした。 MarCO-B と呼ばれるキューブサットの一機(MarCO チームに愛される "Wall-E")は、高利得アンテナの展開を確認する目的も含めて Fisheye Camera(魚眼カメラ)を使って05月09日に最初の撮像を行った。
 

MarCO が初めて撮影に臨んだ画像。クリックすると、注釈付きの画像が表示されます。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech.
 

パサデナの NASA JPL(ジェット推進研究所、Jet Propulsion Laboratory)の MarCO チーフエンジニア、Andy Klesh は、次のように述べている。
「超小型宇宙機であるキューブサットとしては探検することのなかった深宇宙空間に MarCO が達したことは大きなマイルストーンだ。二機のキューブは健全に機能しており、さらに遠くへ移動して行くことがとても楽しみだ」

MarCO 宇宙機は、これまでで最も深い宇宙空間に達したキューブサットだ。キューブサットはほとんどの場合、地球軌道を越えることはない。これらは一般に惑星(地球)上空 497 マイル(800 キロメートル)より低軌道に留まる。
元々、大学生が人工衛星について学ぶために開発されたものだが(日本でも同様)、現在のキューブサットは、地球上の輸送ルートから環境の変化に至るまでのすべてのデータを取得・提供する主要な商用テクノロジーとして重用され「活躍」している。

地震探査、測地測量、熱輸伝達計測による火星内部探査を行うインサイト探査機とともに、05月05日に併せて打ち上げられた MarCO キューブサットは、JPL がミッションを統括し、11月26日に火星に着陸予定のインサイトを監視・追跡している。
 

画像は、1990年に、地球から約 60 億キロメートル離れたボイジャー1号によって撮影された地球の写真。詳しくは、ウィキペディア等を参照ください。
 

薄い大気で覆われた「赤い惑星」への着陸ミッションは、悩ませるほどに常に挑戦的なミッションとなる。
火星への惑星間航行中に、インサイトの後ろを二機の MarCO が追跡する。彼らは火星に向かう途中で、インサイトが火星大気圏に侵入を開始し、火星表面に降り立つまでの間、インサイトの火星着陸プロセスのデータを地球に電送する。高利得アンテナはそのための鍵となる。MarCO チームは、アンテナが正常に展開されたことを既に確認しているが、数週間先に渡りテストを続ける予定だ。

インサイト自体は、データ中継を行う MarCO ミッションの成否に頼るわけではない。インサイトが行うミッションは、自ら完結できるミッションとしてデザインされている。しかし、MarCO は未来のミッションが火星に「自分(同一プロジェクトでのミッション)の中継をもたらす」ためのパスファインダとして大きな存在となるものだ。また、アンテナ、通信、推進システムなど、さまざまな実験技術を実証して、キューブサットが将来ミッションにおいても科学データを取得できる宇宙機として役割を果たす目的も明らかに存在するのだ。

今月後半、MarCO は火星に向かうための軌道調整を行う。キューブサットが火星に向かう現実を我々は受け留めることとなる。人類にとって輝かしく大いなる業績の一つであるが、さらにその先へと今も進んでいる。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office