カッシーニ探査機 : 土星とエンケラドスの間を旅するメロディを聞いてみよう


NASA カッシーニ探査機のグランド・フィナーレ軌道における最新の研究データは、土星からリングと衛星エンケラドスに移動するプラズマ波の、驚くほど強力でダイナミックな相互作用を示している。この最終軌道観測で、プラズマ波が土星からエンケラドスに磁力線上を移動することが示されている。 磁力線は、二つの物体の間の電気回路のようなもので、エネルギーが前後に流れる。
 

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NASA カッシーニ探査機が最後に辿ったグランド・フィナーレ軌道で、土星からリングと衛星エンケラドスに移動するプラズマ波の強力な相互作用を発見した。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

Sounds of Saturn: Hear Radio Emissions of the Planet and Its Moon

カッシーニミッションの最後のグランド・フィナーレ軌道データの解析では、土星から衛星エンケラドスに伝播するプラズマ波の強力な相互作用を示している。研究者たちは、プラズマ波の記録を、人が聞くことができるオーディオファイルに変換した。電波を音声に変換するラジオと同様なものだ。大気や水同様に、プラズマ(物質の第4の状態)はエネルギーを運ぶために波を発生させる。録音は、カッシーニの土星大気突入二週間前に、ラジオ・プラズマ・ウェーブ・サイエンス(RPWS)によって捕捉された。
 

研究者たちは、プラズマ波の記録をラジオが電波から音声信号に変えるように、私たちが聞くことができるオーディオファイルに変換した。言い換えれば、カッシーニは可聴領域の周波数帯の電波を検出したということだ。もちろん、地上では、スピーカーを通してこれらの信号を増幅して再生することができる。記録時間は16分から28.5秒に圧縮されている。

大気や水と同様に、プラズマ(物質の固体、液体、気体に次ぐ第4の状態)はエネルギーを運ぶための波を発生させる。カッシーニ探査機に搭載されたラジオ・プラズマ・ウェーブ・サイエンス(RPWS)は、観測可能な土星に最も近い接近の間に、強いプラズマ波を記録した。

「土星を周回するエンケラドスは小さな発電機として機能し、エネルギーの持続的な供給源であることが判っている」とアイオワ大学の惑星科学者、RPWS チームのメンバーである Ali Sulaiman は語った。
「我々は、土星がプラズマ波の形で信号を発信し、数百マイル離れたエンケラドスに接続する磁力線の回路を介して反応することを発見した」

Ali Sulaiman は、Geophysical Research Letters に発表された、この発見を記述する論文の執筆者だ。
 

土星とエンケラドスの相互作用は、地球と月の関係とは異なる。
エンケラドスは土星の磁場に包まれており、地質学的にも活発だ。プリュームによって放出された水蒸気はイオン化され、土星の周辺を満たしている。土星とそのリングの間でも同様の相互作用が起こっており、これらは非常にダイナミックだ。

録音はカッシーニが意図的に土星大気にダイビングするグランドフィナーレの二週間前、2017年09月02日に行われた。その記録は、物理学者で RPWS の PI である Bill Kurth が率いるアイオワ大学の RPWS チームによって可聴信号に変換された。

GRL(Geophysical Research Letters)に掲載されたこの研究は、米国地球物理学連合のウェブサイトで読むことができる:

Enceladus auroral hiss emissions during Cassini's Grand Finale

Auroral hiss emissions during Cassini's Grand Finale: Diverse electrodynamic interactions between Saturn and its rings
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office