Dawn ミッション:ミッション終了


NASA Dawn(ドーン)探査機は、太陽系の初期のチャプターを湛えたタイムカプセルからの歴史的なミッションを終え、静的な人工物体となった。
 

Imahe caption :
この画像にあるオッカトル・クレータの明るい地域は、Dawn がミッションを完了する前に地球に送られた最後のデータセットのひとつだ。南に面したこの領域は、楕円軌道を周るなか、940 キロの高度で09月01日に撮られたもの。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

フライト・チームは、10月31日、11月01日に予定されていた Dawn と NASA DSN(ディープ・スペース・ネットワーク.Deep Space Network)とのコミュニケーション・セッションを逃してしまった。通信不可の他の要因を取り除くと、最終的にヒドラジン(探査機制御のための燃料)が完全に費えた事実しか残らない、とミッションマネージャは判断した。Dawn は、もはや地球上からのミッションコントロールと通信したり、ソーラーパネルを太陽に向けて充電することも出来なくなった。
 

Dusk for Dawn: NASA Mission to the Asteroid Belt

Video caption : NASA Dawn 探査機は、小惑星メインベルトにあるベスタとケレスの二つの大きな矮惑星をイオン推進を使った探査を行い、サイエンスフィクションをサイエンスファクトに変えてしまった。ヒドラジンを使い果たしたこの秋にミッションは終了する。ヒドラジンは、探査機が地球と通信するための姿勢制御に欠かせない。
 

Dawn 探査機は、11年前に主要小惑星帯(アステロイドメインベルト)に位置する二つの最大級の天体、ベスタとケレスを訪れた。Dawn は今後、数十年に亘り矮惑星ケレス周辺の軌道上に留まる。

「今日、私たちは Dawn ミッションの終わりを迎えた。その驚くべき技術的成果、私たちに与えられた重要な科学、そして宇宙機がこれらの発見を可能にした素晴らしいチーム総てにお祝いを言いたい」
NASA 科学ミッション・ディレクターであるThomas Zurbuchen(トーマス・ザブーケン)は述べる。
「Dawn がベスタとケレスから取得した驚くべき画像とデータは、太陽系の歴史と進化を理解するうえでとても重要だ」
 

2007年に地球を旅立った Dawn 探査機は、約43億マイル(69億キロメートル)もの宇宙空間を走破した。

イオン推進の Dawn は、この終焉までの総ミッションで多くのものを達成した。2011年、Dawn がメイン小惑星帯で二番目に大きな世界を持つベスタに到着したとき、この宇宙機は火星と木星の間の領域で史上初めて軌道を描く宇宙機となった。そして2015年、Dawn が小惑星帯で最大のボディを持つ矮惑星ケレス周回軌道に乗った瞬間、複数の天体を周回した(マルチランデブー)初めての宇宙機となったのである。

「私の車のナンバープレートフレームには、
”My other vehicle is in the main asteroid belt”
とある。Dawn に対して誇りを持つ私の意思表示だ」
NASA のジェット推進研究所のミッションディレクターでチーフ・エンジニアであるマーク・レイマン(Marc Rayman)は胸を張る。
「私たちが Dawn に要求したことはとても厳しいものだったが、都度 Dawn はそれに従いチャレンジしていた。この素晴らしい宇宙機に”さよなら”を告げるのは難しい限りだが、それは時間が解決してくれるだろう」
 

四つの科学観測を試みた Dawn のサイエンスデータは、地球型惑星のような分化天体(ほとんど溶融したか総て溶融したもの)に似る二つの擬似惑星のような世界の比較を可能にし、太陽系形成初期から進化する重要なプロセスを示していることを確認した。Dawn はまた、矮小な惑星でも海洋が形成されることが有るという、惑星形成史の重要な部分への関心を私たちにもたらした。

「多くの部分で、Dawn の遺産と言えるたくさんのデータへのアクセスは、まだ始まったばかり」とJPLの主任研究員であるキャロル・レイモンド(Carol Raymond)は述べている。
「ドーンによる取得データは、惑星がどのように成長し、どのように区別され、太陽系内のどこで生命が発生したのかを探求する科学者によって深く”採掘”されることと思う。またケレスとベスタは遠い惑星系の研究にとってもとても重要。そこで形成される若い星の周りに存在する可能性のある条件を、垣間見ることができるから」
 

ケレスは生命の発生、進化につながる化学を研究する科学者にとって、とても興味のある条件を持っており、NASA は Dawn 探査機の処分について厳格な惑星保護プロトコルに従う。Dawn は20年間以上はケレス周回軌道上に留まる。またエンジニアは、99%以上の精度で少なくとも50年間はこの周回軌道を維持するであろうことを言明している。
 

以上の通り、ミッションプランは、NASA カッシーニ探査機が昨年終了した土星突入という最終的な激しい「突撃」のような終焉をもたらさないことについては確かである。
探査機はヒドラジンを最後の一滴まで使用してケレスの科学観測を行い、 私たちのホームである太陽系について正確な事実を知ることができるように、ケレスの歴史に歪みを持たせないことを選択した。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO. TPSJ Editorial Office