カッシーニ探査機 : ティタン(タイタン)の北半球に広がる小さな湖はメタンで満たされている


カッシーニ探査機は、2017年04月の土星最大の衛星であるティタンにおける最後のフライバイによって得られたデータから、ティタンの北半球にある小さな湖が予想以上に深く、また高地にある丘の上にも湖が造られ、これら大小様々な湖がメタンで満たされていることを明らかにした。
” カッシーニ探査機 : ティタンとの永遠の別れ ” - April 19, 2017
 

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カッシーニ探査機搭載の近赤外イメージャによるこのカラービューは、太陽に照らされたティタンの北半球に点在する海と湖をが示している。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/Univ. Arizona/Univ. Idaho
 

04月15日に「Nature Astronomy」誌上で発表された、フライバイから二年に渡るカッシーニデータの研究結果は、ティタン上にある幾つかのメタン湖の深さを見積もり(100メートル以上)、それら湖の構成についての初期分析である。これにより、液体メタンの雨がティタン上に降り注ぐシナリオ、蒸発に至るプロセス、そして安定した液体を持つ地球以外の唯一の太陽系天体であるティタンに関する情報を提供している。

科学者たちにとってティタンのこのような液体循環は、一つの大きな違いを除いて地球のそれと同様に働いていることを知っていた。ティタンでは海から蒸発して雲や雨を形成する地球とは違い、すべてメタンとエタンでこの循環を発生させている。地球上ではタンク内で加圧しない限り、これらの炭化水素は通常ガスと考える。しかし、ティタンはとても寒く、地球の常温でのガソリンと同様に液体として振る舞う。

そもそも科学者たちは、北半球においてメタンで満たされた広い「海」を確認していたが、周辺にある小規模な湖においてもメタンで満たされていることが判った。そのうち少なくとも一つは、100mの深度を持つことが判明した。これまでに判明していたのは、カッシーニデータによる、南半球で唯一の主要な湖であるOntario Lacus(オンタリオ湖)だけだった。科学者たちは、湖中にメタンとエタンのほぼ等しい混合物を見つけた。

「ティタンをフライバイ観測するたびに、神秘的要素が増してくる」と 今回の研究論文主執筆者のカッシーニレーダ科学者である Marco Mastrogiuseppe(マルコ・マストロジュゼッペ:カリフォルニア工科大学)は語った。
「これらの新しい測定値は、いくつかの重要な謎を解明してくれる。これにより、我々は現在、ティタンの水文学の理解をさらに深くした」

※ 2017年時点での所見は、以下のニュースでよく理解できる。この解明のための最後のフライバイ観測であったと言える。
” 長期ミッションを可能にしたタイタンの存在 ” - August 11, 2017

「エキゾチックな材料で刻まれたティタンの北半球を観測して地質学的に奇妙なのは、北半球の片側の水文学は同じ北半球の反対側のそれとは全く異なるという事実だ。この地球にも見られる特徴は、たとえばあなたが、地球の北極側から地球を見下ろして、北米大陸とアジアの大陸での水文学が全く違う特徴を持っていることを理解するようなものだ」
カッシーニ科学者の Jonathan Lunine(ジョナサン・ルニーン)は語った。

ティタンの北半球東側には、標高の低い大きな海や峡谷、島があり、西側には比較的小さな湖が点在する。最終フライバイ観測によって得られたレーダー測定データから、湖が海抜より高いという以前の発見について確認し、大きな丘や台地の上に湖がメタンを湛え留まっていることを示している。科学者らは新たなイメージとして、メサやビュートのような地形を想起する。

これらの西側の湖は、幅がわずか数十マイル程度であるが、これが非常に深いという事実は、科学者たちにティタンの地質学について新たな何かを伝えている。地球上での同様な湖としてはカルスト湖として知られている。ドイツ、クロアチア、そしてアメリカのような地域で発生し、それらは石灰岩の岩盤が水に溶かされて形成する。

以上のような深い湖のデータ解析と併せて、今回の Nature Astronomy 誌における二枚目の論文は、ティタンの水文循環の謎の解明を深化させる。研究者たちはカッシーニデータから、彼らが「Transient Lakes(一時的な湖)」と呼んできた湖を明らかにした。レーダーデータと赤外線データからの観測値の違いは、湖の液面が大幅に変化したことを示していることを示唆する。

この二つ目の主著者である、ジョンズ・ホプキンス応用物理研究所の惑星科学者、Shannon MacKenzie(シャノン・マッケンジー)は、「最も判り易い解説としては、湖面液体に季節的な変化があったこと」と述べた。
「ひとつの可能性としてこれらの一時的な特徴は、季節を経て蒸発して浅い湖となり、再び満たされるという液体循環」と彼女は言った。

これらの結果とティタンの深い湖に関する当該論文からの見識は、炭化水素の雨が湖を満たし、蒸発して地下に流出し、液体の貯留層を湖下に貯めおくという考えを支持している。
 

2004年に土星系に到着し、2017年09月、グランドフィナーレとして土星大気に突入してミッションの終焉を迎えたカッシーニ探査機は、ティタン表面に総面積 160 万平方キロメートル以上の湖と海をマッピングした。レーダーによって、地形や液体の深さや組成に関する情報を提供するリターン信号(エコー)を収集したレーダー機器で作業を続けてきた結果だ。ティタンの厚い大気層を貫通できる可能性を持つ二つのイメージングシステムも一緒に稼働させた。

2017年04月22日、カッシーニの最後のタイタン接近フライバイで、新しい研究のための重要なデータが集められた。それはこの衛星に点在する小さな湖についての最後の観測ミッションだった。これによって得られたデータは、チームによって最大限に活用された。

「カッシーニがティタン上の小さい湖の表面からエコーを集めることは、ユニークな挑戦だった。同時に最後のこの観測は、カッシーニからのティタンへの最後の歓呼の呼び掛けでもあった。そしてそれは、偉業であった」とルニーンは語った。



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office