NASA OSIRIS-REx(オシリス(オサイリス)・レックス)探査機が地球帰還運用開始!


惑星間宇宙で五年近く過ごした NASA OSIRIS-REx(オシリス”オサイリス”・レックス)探査機は、地球近傍小惑星ベンヌ(ベヌー)から摘み取った豊富な岩片や塵とともに地球に戻る運用を開始した。
 

Image Credit : NASA
 

2021年05月10日月曜日午後04時23分(EDT)に探査機は、メインエンジンを七分間に渡り全開で吹かした。これは、2018年にベヌーに到着して以降、最も重要なエンジン操作だ。この燃焼によって探査機は、時速 600 マイル(およそ時速 1,000 km)で小惑星ベンヌから遠ざかっていく。地球帰還に向けて二年半を掛けた惑星間クルーズの始まりだ。

サンプル採取カプセルをリリースすることにより、OSIRIS-REx 探査機の主要なミッションは完了となるが、まずはエンジン制御によって地球を安全にフライバイし、金星軌道内を経て太陽周回軌道に乗せる。

太陽を二周回した後、OSIRIS-REx 探査機は2023年09月24日に地球に到達する。地球に近づくと、ベヌーの破片を積載したサンプル採取カプセルが探査機から分離し、地球の大気に入る。カプセルは、回収を心待ちにする科学者が待つユタ州の西砂漠にある Utah Test and Training Range(ユタテストアンドトレーニングレンジ)にパラシュートで降下していく。

「OSIRIS-REx が手にした多くの成果は、深宇宙探査をリアルタイム展開するという革新的で大胆な手法により得たものだ」と、NASA 本部の科学担当副管理者である Thomas Zurbuchen(トーマス・ザブーケン)は述べている。
「チームは未知のチャレンジに立ち向かった。そして今、我々は太陽系の始原的パーツを地球に持ち込み、そこから世代を越えて研究者たちがその秘密を解き明かすことになるのだ」

12名のナビゲーションエンジニアによって探査機のベヌー離脱は計算され、コンピュータコードを作成してその時期を指示した。ベヌー離脱後のチームの次の重要な目標は、サンプル採取カプセルを安全に地球に届けることだ。この航行には、探査機が延長ミッションに向かうための軌道技術・調整計画も含まれる。

「我々の全体的な考え方としては、『ベンヌと比較して、私たちは宇宙のどこにいるのか』だった」と、NASA ゴダードスペースフライトセンターの OSIRIS-REx プロジェクトマネージャー代理である Mike Moreau(マイク・モロー)は述べた。
「今や我々の思考は、『地球との関係で探査機が宇宙のどこにあるか』に移った」

ベヌー探査に関して探査機の航行制御を担ったナビゲーションカメラは、ベヌーの最後の画像を撮った後、04月09日に眠らされた。バックミラーにベヌーが映る状態でエンジニアは、NASAの深宇宙通信設備のディープスペースネットワーク(DSN)を駆使して、OSIRIS-REx 探査機との通信を行い航行を制御している。探査機のトランスポンダから返される波の周波数を測定することで、エンジニアは OSIRIS-REx 探査機の移動速度を知ることができる。エンジニアは、無線信号が探査機から地球に戻るまでにかかる時間を測定して探査機の位置を特定する。
 

Exceeding Mission Expectations(期待を超えたミッション)

05月10日の小惑星ベヌーからの出発日は、ベヌーと地球の位置関係に基づいて正確に調整された。帰還操作の目標は、2023年09月に地球から約 6,000 マイル(約 10,000 km)以内に探査機が位置することにある。OSIRIS-REx 探査機にはまだ十分な燃料が残っているが、チームは将来的な可能性のために可能な限り多くの燃料を保存しようとしている。サンプル採取カプセルを地球に戻した後、別の小惑星に向けた拡張ミッションを決定した。チームはこの夏、これらミッションの実現可能性を精査することになっている。

探査機の軌道は、主に太陽の重力によって決定されるのだが、エンジニアはエンジンの燃焼によって時折小さな軌道調整制御を行う必要がある。

「カプセルリリースのための地球フライバイ軌道調整、そして最後の地球圏離脱のためのエンジン燃焼に到るまで蓄積される可能性のある小さなエラーを予測・理解のために定期的な修正を行う必要がある」
カリフォルニア州シミバレーに本拠を置く KinetX Aerospace の OSIRIS-REx ナビゲーションリードである PeterAntreasian(ピーター・アントレージャン)はこのように述べている。

チームは、地球の大気圏へのサンプル採取カプセルの放出の場所と角度を正確に照準するため、地球へのリエントリ数週間前から軌道調整を実行する。突入角度が低くなり過ぎると、小石が湖を飛び越えるようにカプセルが大気から跳ね返る可能性があり、高過ぎると大気からの摩擦と熱のためにカプセルが燃え尽きる可能性がある。OSIRIS-REx 探査機がカプセルのリリースに失敗した場合、チームはそれを地球から逸らして2025年に再試行するバックアップ計画を立てている。

「プロジェクトチームでは、ベヌー離脱出について非常に感傷的だ」とプロマネ代理のモローは言った。
「我々はミッションにおいて困難な課題に多々直面したが、計画したすべての目標を達成することができ、誰もが素晴らしい達成感を持っていると思う。しかしミッションが今、地球帰還によって終わりに近づいているというノスタルジーと脱力感をも感じている」
 

OSIRIS-REx プロジェクトは期待を大きく超えたミッションだった。世界的感染症流行の真っ只中に、チームは最も重要なミッションであるベヌー表面からの 2 オンス(60 グラム)以上の試料採取に成功した。

サンプル採取に至るまでは、多くのサプライズによってチームは足を引っ張られた。たとえば、宇宙船がベヌー周回の最初の軌道に入った一週間後の2018年12月31日、小惑星が小さな岩片を宇宙空間に放出していることが判明した。

「表面から放出された小さな粒子が探査機に危険を及ぼさないかを確認するためにスクランブルを掛ける必要があった」とモローは語った。

小惑星に到着すると、ベヌーに岩塊が散乱していることにチームメンバーも驚いた。

ツーソンのアリゾナ大学に本拠を置く OSIRIS-REx の副主任研究員である Heather Enos(ハザー・エノス)は、次のように述べている。
「与えられた現実は大きな衝撃だった」

ベヌー表面における極端で予想外の凹凸(ruggedness)を克服するためにエンジニアは、より正確なナビゲーション技術を迅速に開発する必要が生じた。サンプル採取するためには狭い採取地点をターゲットする必要があるからだ。

OSIRIS-REx ミッションは、新たな科学的知見と反証の両方に貢献した。確認されたものの中には、小惑星上の鉱物が炭素に富み、原始の水の兆候を示すことを予測するために地球上観測を使用した技術があった。失敗であったことの証明としては、ベヌーが滑らかな表面を持っているということであった。科学者は、その表面から放射される熱の量を測定することによって予測していた。

科学者は、ベヌー探査から収集した情報によりこれまでの理論モデルを改良し、将来に向けて想定を改善していく。

「このミッションは、仮定と予測モデルがまさにそうであったため、地上観測と宇宙におけるその場観測の両方で科学と探査を行う必要がある理由を強調している」と Enos は述べた。
 

Goddard は、OSIRIS-REx の全体的なミッション管理、システムエンジニアリング、および安全性とミッションの保証を提供する。アリゾナ大学ツーソン校の Dante Lauretta(ダンテ・ローレッタ)が主任研究員である。大学は、科学チームとミッションの科学観測計画およびデータ処理を主導している。コロラド州リトルトンにあるロッキードマーティンスペースは、宇宙船を製造し、飛行操作を担う。Goddard と KinetX Aerospace は、OSIRIS-REx 探査機のナビゲートを担当している。OSIRIS-REx は、NASA ニューフロンティア計画の三番目のミッションであり、アラバマ州ハンツビルにある NASA マーシャル宇宙飛行センターによって管理されている。

OSIRIS-REx の詳細については、以下のWebサイトをご覧いただきたい。

OSIRIS-REx | NASA
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office