The Planetary Society of Japan

The Planetary Report

Archive 1998

 

マーズ・パスファインダーの見た火星の日没

[ 1998年01月/02月 ]

Jennifer Bohn(本誌編集スタッフ)

 

新しい工学テストが主目的とはいえ、マーズ・パスファインダーの火星着陸は感動のドラマでした。昨年9月に活動を停止するまで、ランダーは1万6000枚、ソジャーナーは500枚以上の画像を撮影し、火星の風、気圧、気温に関する850万におよぶ観測データを収集しました。ソジャーナーに搭載されたアルファ・プロトン分光計(APX)は、岩石や地形のデータを送ってきました。その一部をご紹介します。
 

マーズ・パスファインダーが見た日没の火星。地平線の彼方に太陽が沈み、空が紫色に染まる頃の火星は、地球の日没を思わせる目を見張るような光景が広がります。
 

 

ミニ・ローバーのソジャーナーのカメラが撮った砂丘で、ランダーからは見えません。砂丘の高さは1メートル以下で、幅は数メートルあります。東北から南西(画面右から左)の風で吹き寄せられたダストでできたものと、考えられています。しかし、火星の場合は、砂丘の粒子が厳密な意味で砂と呼べるものかどうか、現在も議論が続いています。地平線の右方向の 1km 前方にツイン・ピークス(双子の峰)が、左方向 2.2km 前方にビッグ・クレーターが見えます。
 

 

ローバーが撮ったこの画像には、小石のようなもの、円形の地表、そして凝集岩と思われる岩石が見られます。こうした物体は、地球では通常起源を異にする数種類の岩石のかけらを融合させる長年の地質変動により形成されます。
 

しかし火星では、どのような力の作用でこのように独特の表面を持った岩ができたのか。岩石がどのような腐食作用で小石ができたのか。地質学者達はそのメカニズムについて様々な考察をしている。例えば、波となって押し寄せる水の浸食、洪水、さらに氷河、また、これ以外にも衝突、溶岩流、火山の噴火、堆積岩石の凝集、あるいはこれらの複合的な作用によって引き起こされた可能性が考えられます。
 

 

ローバーが撮ったクローズアップ画像には、ランダーの画像には見られない岩石のきめや構造が見られます。これらの岩石には表面に丸みを帯びた突出部が見られることから、凝集岩であることが分りました。キャベッジ・パッチ岩の右上にはこの突出部がはっきり見えます。右下の小さな岩には、長年の風化作用で岩が削り取られた後の小石大の窪みが認められます。
 

 

火星の水を調査する科学者の言によれば、火星の地表に最も重大な影響を及ぼしたのは風であるとのことである。この図は、セーガン記念基地周囲の砂の堆積地において、風に運ばれて岩の回りに集められた極く細かい砂の粒子が移動した軌跡を示したものです。赤い矢印は、北東から南西に吹く風の方向を示すもので、バイキングのオービターの画像に、火星のクレーターの中とその周辺の堆積物にこれと同じような明暗の筋模様が見られます。
 

 

ローバーの見たチンプ・ロックの前面には、右下から左上にかけて風が吹き抜けた軌跡ときめの細かい地表が見られます。右下に見える風で吹き寄せられて粒子の堆積に付けられた風の軌跡が、たくさんの岩の周囲に見えます。
 

 

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