The Planetary Society of Japan

The Planetary Report

Archive 1999

 

何が惑星Xに起こったのか?

[ 1999年05月/06月 ]

John. D. Anderson

 

冥王星の彼方に世界はあるのか?最近の理論的説明、観測データの発見によるとクピアー・ベルトには多くの氷状の天体が存在することを示している。しかしそれ以外に何かもっと大きな天体、惑星Xは存在するのか?今のところ太陽系外を探査しているパイオニア、ボイジャーからのデータではそのような世界の存在を示す兆候はない。
 

 

まず最初に、海王星軌道の彼方に未発見惑星の存在する可能性が高い。「惑星X」である。数学でXは未知を意味する。ローマ数字でXは10を意味し、もしそのような惑星が存在するならばそれは太陽系10番目の惑星となろう。既知の星々の彼方にある未知の惑星の発見は近代天文学の絶えざるテーマであり、古くは1781年のウイリアム・ハーシェルの天王星、1846年ヨハン・ゴットフライド・ゲールの海王星の発見まで遡る。

アーベイン・ジーンーヨセフ・レベリアーとジョン・コウチ・アダムスは海王星の引力が天王星へ与える影響力を計算することで海王星の位置を予測することに成功したが、パーシバル・ローウェルは同じように軌道を計算することで1914年に太陽系9番目の惑星の位置を予測した。1930年にはクライド・トンボーがアリゾナ州フラッグスタッフの観測所で観測中にローウェルが予測した位置近くで冥王星を発見した。

最初この発見は天体構造図の勝利として称えられたが、トンボー自身はこのことに懐疑的であった。正しく、冥王星は天王星や海王星の軌道に観測可能な影響を及ぼすには余りにも小さすぎることが明らかになるにつれ、天文学者達の間では1930年のローウェルの予測点近くでの冥王星の発見は全くの偶然であったことに意見が一致した。
 

冥王星彼方からのサイン

11年前、私は惑星X(プラネタリーリポート1988年7・8月号)の探求状況を見直して、天空における惑星Xの位置を予測するのに、多くの学者が未だ解決を見ていない天王星と海王星の位置誤差値をそのまま使用していることを指摘した。以来多くのことが起こったが、最も重要なのは1951年にジェラルド・クピアーが仮想した通り、海王星軌道の彼方には帯状の標的物体が存在することが確認されたことである。(クピアー・ベルトの詳細はプラネタリーリポート1994年1・2月号参照)

クピアー・ベルトの発見は、太陽系形成期既知の惑星は比較的密度の高い惑星形成前のディスク状から吸収増大していったのに対して海王星軌道以遠の低密度では冥王星より大きな惑星にとっては拡大することは不可能であったとの見解を支持するものとなった。その代わりに数十万もの小規模物体を形成することとなった。この小規模物体ベルト近辺では地球より大きな惑星が存在することは不可能と思われる。

しかもこれだけではない。1993年にはジェット推進研究所(JPL)のE・スタンディシュが未知の惑星の影響によるとされる天王星と海王星の位置誤差は誤差でもなんでもないことを証明した。スタンディシュは明瞭な意見相違点についての説明を二通り用意した。第一に、1980年にJPLが惑星軌道を計算した結果が、世界中に広く天体位置推算表(DE200)として天体年鑑の惑星位置の基本となって以来、誰も天王星の軌道計算修正を試みていないと言うことである。19世紀と20世紀に得られたデータを使用してスタンディシュは軌道計算を細かく修正することで天王星の位置に関する間違いのほとんどを取り除くことが出来た。

残りの小さな間違いを修正するのにスタンディシュは、1985年から1990年にかけてのパイオニアとボイジャー宇宙船のフライバイから得られた最新の惑星質量のデータを採用した。最も重要なのは、ボイジャー2の海王星のフライバイから得られたデータはDE200の質量より 0.5% 低い値を示したことである。海王星の位置についてのその他の間違いはその長期の軌道期間によって説明されよう。スタンディシュは海王星発見以前の1613年の天文学者ガリレオと1795年のJ・F・ラランデ(二人共惑星は恒星と推定した)の観測には明らかな相違点を見出さなかった。

天王星と海王星の観測結果は惑星Xとは無関係に修復できるという事実は、だからと言って惑星Xが存在しないと言う証拠には決してならない。1991年にトロント大学のデビット・W・ホッグとジェラルド・D・クインランならびにスコット・トレメインはより高度な分析をもってすれば惑星Xの存在は証明出来るとの結論に達した。それでも尚且つ過去10年の研究では惑星Xの存在は天王星と海王星の軌道に与える影響だけを追っていたのでは発見できないことを示唆している。もし惑星Xが存在するとしたら恐らくは望遠鏡か赤外線放射による発見の確率の方が高い。

1929年から1943年にかけてのクライド・トンボーの努力を始めとするあらゆる望遠鏡による探求にも拘わらず今のところ何も発見されていない。1977年から1984年にかけてチャールズ・T・コウワルはパロマ観測所の48インチ・シュミッド望遠鏡で黄道(黄道は地球の軌道が描く幾何学的円周で、殆どの惑星の軌道は太陽黄道に対して数度の傾斜をしている)の北から南にかけての広大な範囲の上空を観測した。コウワルの観測はトンボーよりももっと小さな天体をも対象としたが、またしても結果は新惑星の発見には至らなかった。ただ5個の彗星と土星と天王星の軌道間をうろつくシロンを含む15の小惑星を発見したにとどまった。赤外線放射観測については赤外線天体衛星(IRAS)が広大な物体サンプルを示してくれたが、そのいずれも未だ惑星Xとは認定されていない。

もし惑星Xが存在したとしても、現在の技術水準ではその発見は無理かも知れない。問題の惑星はクピアー・ベルトの外側にあるのかも知れないし、その軌道周期も800年又はそれ以上かも知れず発見するには何らかの新しい方策が必要かも知れない。仮想惑星Xの発見は冥王星や海王星の3倍から4倍の距離を探査する新技術の開発までおあずけとなることを意味しているのかも知れない。クピアー・ベルトの発見に寄与したハーバード大学のジェーン・X・ルーとハワイ大学のデービッド・C・ジュエットの開発した新技術をもってしても、ゆっくりとした速度で動く惑星Xには無理かも知れない。
 

この太陽系の図表は我々のよく知る惑星の比較軌道を示している。もし我々の惑星社会の遥か彼方の僻地に第十番目の惑星があるとすれば、その惑星の発見には全く新しいテクノロジーを必要とするだろう。
 

 

摩訶不思議な力

1988年の記事で私は惑星Xの証拠を掴むのにパイオニア10号と11号とを利用する試みを発表したが、その基本戦略はどちらかの宇宙船が地球の質量の4~5倍の惑星に接近すれば宇宙船の航行軌道に明らかな歪みがでるであろうということである。惑星Xからの引力の影響があったとの証拠はないが、説明不可能な力がパイオニア10号11号両船に働いたのは明らかである。両船とも太陽系から抜け出るのに予期せぬスローダウンを強いられたようである。加速として表現される場合(物理学で加速というのは速度の変化であり必ずしも速度の増加ではない)このスローダウンは地球の引力による加速の120億分の1に過ぎない。

パイオニア10号の現在の太陽からの距離での太陽の引力の影響は前述の説明しがたい影響に比べると1500倍も強い。太陽の引力(距離の2乗に反比例する)が弱まるにつれてパイオニアー10号が2700AU(1AUは天文学上の単位で地球と太陽との平均距離である)の距離に達した時に太陽と前述の説明不能の引力が等しくなる。この説明不能の加速は一向に弱まる気配を見せず1987年以来驚くほどの一定値を保っている。

これは一体何なのであろうか?説明不能な抗力は太陽方向に伸びているように見えるが確かなことは言えない。宇宙船のスローダウンは宇宙船自身から発した力によるものかも知れないが、この場合は明らかに太陽方向と思われていたものが地球方向であるかも知れない。パイオニア10号から見える太陽と地球の方向はそんなに離れてはいない。両船ともスピン回転しており、その軸は地球に向いている。宇宙船自身の発生した力で回転軸方向以外の全ての方向に対して抗力が相殺されたとも考えられる。

抗力は両船ともに同じように働く。時間や距離とともに変化することはない。両船とも同型で同等の抗力を発生しよう。しかしながら、抗力の規模やその一定性を説明するのは困難である。念の為、結果を報告するのに10年の歳月を費やして観測した。時間の経過とともに我々は確かに何か新しいものを発見したと認識している。その結果1987年にJPLでユーニス・ロウと私はパイオニアのデータは将来の分析に備えて間違いなく保存されることを確認し、現存するデータの更なる詳細な分析に取り掛かった。

約3年前にフィリップ・A・ラングとアンソニー・S・リューはエアロースペース・コーポレーションのソフトウェアを使って古いデータの独自の分析に着手した。数ヶ月して彼らは我々の明白な抗力の結論を証明したが、彼らは独自のソフトを使ったが故にJPLのコンピューターの欠陥によるものではなさそうだとの結論に達した。ロス・アラモス国立研究所のミカエル・マーティン・ニエトとJPLのスラバ・チュリシェブも研究に共同参加し理論解明とデータ分析を助けている。我々は暫定結果を1998年10月5日付けのフィジカル・レビュー・レターズに発表した。

我々の基本的結論は抗力の原因はデータの何かまだ解明の出来ていないシステム上の問題か宇宙船のシステムそのものにあるのかも知れないということであるが、反面ひょっとしたら引力の働きについて何か新しい発見をしたのかも知れないという可能性が微かにある。もしそうならそれは実に不思議な働きである。その結果は惑星軌道では発見されていない。小規模天体については、カプチエン天文研究所のロバート・H・サンダースは、もし太陽方向の加速が小惑星イカラスに働いているのなら小惑星の近日点(太陽に最も近い点)で歳差運動が見られることを指摘している。予測された効果は未だ観測されていない。

今までパイオニアに影響を与えた抗力を見てきたが惑星や小惑星についてではなくこれは困難な仕事である。パイオニアについてはっきりしていることは宇宙船は太陽系天体に比べて質量が圧倒的に小さく又宇宙船は退避軌道に乗っていたということである。太陽系からの退避軌道には彗星や他の自然天体は観測されておらずパイオニアは何か新しい事実を我々に告げている。もし更なる分析によって抗力は宇宙船自身によって発生したものではなく、又データのシステム上の欠陥でもないことが判明するならば、この説明不能の不思議な力は一体何なのかについて何か面白い事実の可能性があるかも知れない。

又これは哲学的な宇宙論的因果証明とも関連があるかも知れない。1929年にエドウイン・ハッブルは銀河系宇宙はあらゆる方向に地球から離れつつあることを発見した。彼は又銀河系の後退する速度はその地球からの距離に比例し遠ければ遠いほどその速度が速い事を証明した。天文学者はこの速度と距離の正比例率をハッブル係数と名づけ、これをもって原始のビッグ・バンから宇宙が拡大している比率と解釈している。

もしこの解釈が正しいものならばハッブル係数は宇宙の年齢について予測値を与えてくれるかも知れない。現在どれくらいのスピードで宇宙が膨張しているかが分かっているので、天文学者は創生期まだ宇宙が一点であった時が何時であるかを計算することが出来る。この予測にはばらつきがあるが大体宇宙年齢は160億年と推定される。パイオニアとの関連では、未解のパイオニアの加速値を光の速度で除すればハッブル係数と大体同じような数値を得られる。更に、ワイズマン研究所のM・ミルグロムが研究したように加速度は大体のところ銀河系の螺旋回転の交差点に等しいものであろう。あるいは説明不能の力は太陽系外の宇宙船の動きを説明するためには未知の全く新しい物理学を必要とするのかも知れない。

変則的なパイオニアの力の原因がなんであれ我々はパイオニアのみならず他の宇宙船ともこの問題に取り組んでいく。予定されているプルート/クピアー・ベルト・ミッションでは太陽系の外側をパイアニアより遥かに優れた技術で探査してくれるであろう。手始めに我々はJPLのミッション計画担当の技術者と科学者に会い、出来るだけ宇宙船自身が抗力を発生しないよう依頼した。この間依然としてパイオニア10号は宇宙の果てへ旅を続け、我々の未知への目標を更に広めている。

ジョン・D・アンダーソンはジェット推進研究所の惑星科学者であり、且つガリレオ・エウロパ・ミッションの科学チーム・リーダーであり、カッシニ・ラジオ科学チームの一員であり、スターダスト・ミッションの共同調査員である。又パイオニア10号と11号の主任調査員でもあった。
 

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